コラム

スポンサーが若手経営者に経営を委託する場合の機関設計

2009年8月12日 | 起業支援

若手起業家に投資する

余裕資金を若手起業家に託してベンチャービジネスを応援されることがあります。資金は出すが経営は行わないというエンジェル的スポンサーの立場に立った場合、会社の機関はどのように設計するのがよいのでしょうか。経営者が大株主である場合には、ほぼ株主の利益=社長の利益といえますが、第三者を巻き込んで起業を行う場合、経営者の暴走を阻止する手段を機関設計に反映させておく必要があるともいえます。今回は、経営者の立場からの仕組みではなく、株主の立場からの考え方を整理しておきます。

利害対立の有無とガバナンスは違う

通常、会社の設立段階や増資の段階では、スポンサーも経営者も希望をもって事業拡大を考えているものです。スポンサーは経営者の発想やバイタリティーに共感して資金を提供する。経営者は自らでは準備できない資金をスポンサーに出資してもらうことでより大きなビジネス展開を目指しています。いずれはIPO!!という目標設定をし、スポンサーはキャピタルゲインで投資回収するという計画もよくあるものです。この段階では、経営者も出資者も共通の目標に対して熱くなっており基本的に利害は対立していないと考えられます。
同じ目標に対してそれぞれが役割分担をしたとしても、お互いのルールが必要です。事はビジネスですから、口約束ではなくしっかりとルールを明確にしておくべきでしょう。そのひとつが機関設計です。

(代表)取締役の職務執行を監督する方法

日常の会社の意思決定は取締役会もしくは取締役が行います。その決定に従って、代表取締役が対外行為を行うのが法律の建前です。このような職務執行は日々行われるもので、現実には全ての行為を協議により決定するのは現実的ではありません。そこで、会社にとって重要な一定の行為を行うには、取締役が単独で決定するのではなく、株主総会や取締役会を経なければならないとされています。株主総会に決定権限が認められたもののうち、相当程度のものは取締役会に権限委譲することが認められています。この場合、取締役会は代表取締役の職務執行を監督する立場とされています。
また、取締役を監督するために監査役を置くこともできます。
要するに、株主総会の権限をどこまで取締役会に委譲するか、取締役会の構成員(取締役)をどのようにするか、監査役という立場から取締役をどのように監督するかという点が取締役の監督方法としての機関設計と言うことになるわけです。

株主総会 + 取締役

これは取締役会を設置しない機関設計です。取締役会が存在しないため、業務執行のうち法定の事項は株主総会の決議により決定しなければなりません。株主にとって最も厳しく取締役を監督する方法です。株主が望むのであればこのような方法もありえますが、事業進行のスピードが奪われる可能性もあります。実際にはあまり現実的ではない方法とも思えますが、お互いの信頼関係が十分に出来上がるまではこの方法で、、、ということもあるかもしれません。

株主総会 + 取締役 + 取締役会 + 監査役(会計参与)

取締役会を設置することで、株主の監督権限を大幅に取締役会に移譲することができます。取締役単独で経営判断を行うのではなく、取締役会の合議として行う方式とするわけです。この際、スポンサー株主もしくはその人が信頼する人を社外取締役として送り込み日常の業務を監督してもらうことが望ましいと言えるでしょう。
取締役会を設置する場合には、その監督機関として監査役または会計参与を同時に設置しなければなりません。会計参与は資格要件がありますので、適任者がいない場合には監査役を設置する必要があります。監査役にスポンサーが就任するという方法もありますね。ただし、監査役には取締役の職務執行を監査する権限がありますので、取締役会にその都度出席する義務も生じますから注意が必要です。

段階的に機関を修正していく

機関設計は旧商法とはことなり、非常に弾力的に設計できるようになりました。
起業の初期段階では経営判断をしなければならない事項も日々生じるとは限りません。逆に、毎日が重要な経営判断の連続ということもありえますが、株主総会や取締役会で監督しなければならない法定事項はそれほどないかもしれません。そうした事情を勘案して、起業当初は『株主総会 + 取締役』というパターンを選択し、会社規模が拡大してきた段階で経営のプロとしての役員を増員し『株主総会 + 取締役会 + 監査役(会計参与)』というパターンに変更することも考えられます。機関の設定方法は定款記載事項ですので、変更を行う場合には、株主総会の特別決議により定款を変更する必要があります。この場合でも、スポンサー株主がシェアを握っているのであれば、それほど難なく変更が可能だと思われます。

悩むよりも相談してみましょう

私たちは起業を志すみなさまのために無料で相談をお受けしています。
会社設立から設立後の諸問題までさまざまな経営者のご判断のサポートをさせていただいています。
一度試してみてはいかがですか?





このエントリーをはてなブックマークに追加 Yahoo!ブックマークに登録

免責

本記事の内容は投稿時点での税法、会計基準、会社法その他の法令に基づき記載しています。また、読者が理解しやすいように厳密ではない解説をしている部分があります。本記事に基づく情報により実務を行う場合には、専門家に相談の上行うか、十分に内容を検討の上実行してください。当事務所との協議により実施した場合を除き、本情報の利用により損害が発生することがあっても、当事務所は一切責任を負いかねます。




無料相談のお申し込み

起業・経営に関することなど、お気軽にご相談ください。

対談:独立開業ものがたり

上原将人(上原公認会計士事務所) × 阿部淳也(1PAC. INC.)

コラム

あなたの悩み解決を手助け。
上原公認会計士事務所所長の上原将人によるコラム。

お客様の声

お客様から頂いた声を事例としてご覧ください。