起業は自己資金で賄うのが原則
2011年3月18日 | 起業支援
起業したらどれぐらい借入できますか?
無料相談でこのような質問を受けることがあります。
確かに、起業支援のための融資制度が多数あります。
実際に融資を受けることもできます。
しかし、起業で過度に融資に期待することはどうかと思います。
金融機関は、事業性を評価するのが苦手です。
むしろ、過去の(融資の)失敗事例を考慮する傾向があります。
事業が成功するかしないかは、本来、過去の他人の事例とは無関係です。
その起業家の経験と行動力に影響される側面の方が多いものです。
金融機関は、事業性よりもその人の過去の実績を重視する傾向があります。
誰もが納得するような実績がある人は融資を受けやすくなりますが、そうではない場合には厳しい審査結果に終わることも覚悟しておくべきでしょう。
融資は厳格な契約に基づくもの
融資は言うまでもなく『借金』です。
融資は、返済されることを前提に行われるものです。
出世払いを前提に融資を行う金融機関はありません。
このことを明確にするために、厳格な内容の金銭消費貸借契約書が作成されます。
当たり前のことです。
金銭消費貸借契約書には経営者の連帯保証や担保提供が規定されます。最低でも経営者の連帯保証が必要になります。
借入が実行された直後は資金的に余裕がありますが、売上の状況とは無関係に契約どおりどんどん返済が進められていきます。
それ故に、綿密な収支計画を練っていなければなりません。
売上について楽観的な見込をしてはいけませんし、万が一予定通りに売上が確保できない場合のことも想定した収支を計画しておかなければなりません。
リターンマッチが日本にはない
問題なのは、融資を受けていて返済ができなくなった場合です。
返済に遅延が生じれば、連帯保証等の履行請求が行われ、個人財産からの回収が行われることになります。金融機関は事務的に回収手続きを実施するものです。
回収手続きに入った段階で事故案件にエントリーされる可能性が高いと考えておかなければなりません。
個人財産で弁済が完了できればよいのですが、不足が生じてしまった場合、一生をかけて残債の弁済をしていかなければなりません。破産という方法もありますが、金融機関から見れば事故債権であることに変わりはありません。
残念なことに日本では、こうした金融事故に対して非常に厳しい対応をとられます。
再起をかけて新規事業を立ち上げたとしても、金融機関からの融資は事実上不可能になってしまうのです。
新規起業の場合、政策金融公庫と信用保証協会の保証付き融資になると思います。以前は両者で信用情報を共有していなかったようですが、現在は情報共有がなされ、政策金融公庫での事故情報は保証協会に、保証協会の事故情報は政策金融公庫に、それぞれ共有されているということです。
過去の金融事故が呪いのようにつきまとってくるのが現状なのです。
起業資金は自己資金を原則としましょう
起業に際して、金融機関からの融資に過度に期待しないことが大切です。
何の根拠もなく収支計画に『銀行融資』を織り込んで退職してしまうのは危険です。計画通りの融資を受けられなければ、いきなり事業プラン自体を変更しなければなりません。
融資を受けられたとしても、計画通りに売上を獲得できなければ返済に窮してしまいます。
起業資金の大半を融資に頼った収支計画では、金融機関も融資をしにくいものです。
起業自体がもともとリスクのあるものであり、本人がそのリスクを負担しないで金融機関に頼るという姿勢がマイナス評価になるわけです。
起業資金のほぼ全額を自己資金で賄うのが理想です。
少なくとも起業資金の半分は自己資金で賄い、残りを金融機関に融資してもらう計画にすべきです。
もし、自己資金を確保できないのであれば、起業プラン自体を見直すか、自己資金を貯めてから再検討すべきだと思います。
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