コラム

事前確定届出給与の受給を放棄すれば損金不算入額はなくなる

2012年5月14日 | 税金の基礎知識

届出額50万円のうち20万円の支給は不利なだけ!?

事前確定届出給与の取扱いは実務上厄介なものです。
届出(額・時期)通りに支給しないと支給額が損金不算入になってしまうからです。

届出額を50万円としたのに、業績がよくないから20万円だけ支給したら、20万円が損金不算入になってしまいます。

これが年に2回以上の支給で定められていたら厄介です。
たとえば、
3月決算の会社で、7月に50万円、12月に50万円をそれぞれ支給するものとして所轄税務署に届出ていたとします。
7月は満額の50万円を支給し、12月は20万円だけ支給したら、70万円(50万円+20万円)が損金不算入になってしまうからです。

中途半端な支給をするなら受領を辞退してしまうのも方法

中途半端な支給をするから法人税の課税を受けてしまうわけです。
そうであるなら、全額もらわなければOK!?という考えも出てきますよね。

そうなんです。
その職務執行期間中(定時総会から次の定時総会まで)の事前確定届出給与分としての実際支給額が損金不算入になるのですから、届出通り支給されなければ、損金不算入額はゼロになってしまうだけです。

不支給の場合の手続きを間違えなく行うこと

支給を行わないのであれば、きちんとした手続き(書類作成)をしておかなければなりません。

必要書類は、

 

  • 役員からの事前確定届出分報酬の受領辞退書

 

 

  • 受領辞退申し出に基づく取締役会での不支給決議

 

 

上記の書類は、作成すればよいというものではありません。
日付が重要となります。

事前確定届出における支給日より前の日付でなければなりません。

【所得税基本通達 28-10】給与等の受領を辞退した場合
給与等の支払を受けるべき者がその給与等の全部又は一部の受領を辞退した場合には、その支給期の到来前に辞退の意思を明示して辞退したものに限り、課税しないものとする。
(注)既に支給期が到来した給与等の受領を辞退した場合については、181~223共-2及び181~223共-3参照

事前確定届出給与に関しては、株主総会の決議等で定めた支給日を給与所得の収入確定日とされています(所得税基本通達逐条解説36-9の解説部分)。

この日付を過ぎると、上記注書きの取扱いになります。要するに源泉徴収義務が発生します!ということです。

役員報酬の支給は会社と役員との間の委任契約を根拠とします。役員報酬に関する委任契約は双務契約であるため、いずれか一方だけの意思表示では完結しません。よって、上記2つの書面が不可欠となります。

できれば、それぞれの書類に確定日付をとっておいたほうがよいでしょうね。





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