コラム

『高田直芳の実践会計講座 「戦略会計」入門』

2012年6月5日 | 管理会計 / 読書

高田先生の本のご紹介です。
前回の『「管理会計」入門』に軽いショックを受け興味を持ったのがきっかけでした。

どうやら本格的に「ありそうでなかった」高田ワールドの扉を開いてしまったようです。
高田先生の著書のタイトルは、「どこにでもありそう」な「管理会計」「戦略会計」ですが
中身は従来の理論教本とは全く違うのです。

本書は、経済学の理論を本気で実務に応用しようとしています。
この、高田先生の「本気」は今までありそうでなかったものでした。
というのも、従来、経済学と会計学は別物として議論されてきたと思います。
しかし、高田ワールドでは、
経済学⇒会計学
会計学⇒経済学
というように、相互検証を行い両者の同一性を検討しています。

市場の動静を経済学的に整理し、各段階で検討すべき経営戦略の方向性を示す。的確な経営情報を収集・活用するための道具として管理会計(戦略会計)を位置づけています。

これを踏まえて経済学の会計学への応用可能性、さらには経営学への応用可能性を検討しているのです。全く新しい試みだと思います。

経済学の均衡理論や独占的競争市場において発生する現象を実際の企業経営にどのように応用するか。企業のおかれたポジションを分析することで、どのような経営戦略を選択すべきなのかなどが検討されています。

ただ、ミクロ経済学では、情報の完全性があるものとして理論化されているわけですが、実社会はそうはいきません。市場規模にしても、市場の成熟度にしても客観的確実な数値を手にすることは困難です。
実務化するためには企業ごとに何らかの仮説を想定し、検証していく作業が不可欠となります。万が一ミスマッチした場合、経営の失敗につながる予感もします。しかし、情報が不完全な実社会であっても、こうした試行錯誤を繰り返す努力をしている企業と直感に頼った経営をしている企業とではいずれ大きな差となって現れることでしょう。

本書を読解するには、会計の基礎知識とCVP分析に関する基礎知識に加え、ミクロ経済学の知識がある程度必要かもしれません。
本書で展開される理論は公認会計士試験の試験科目でほぼ網羅されるものなので、自分としては懐かしい知識ともいえました。しかし、実務で経済学を使うことはあまりないように思いますから、とっつきにくい方もおられるかもしれません。受験レベルで理解する必要があるものではありませんから、気楽に読む姿勢でよいと思います。

著者の高田先生とは何者よ?と思って調べてみると、公認会計士試験の試験委員をされているのですね。受験生にとってはきついかもしれませんね。でも、実務では役に立つ知識が満載ともいえますから頑張ってもらいたいです。





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