とんでも決算書1
2009年10月5日 | 資金調達と決算書
社長!すごくお金持ちの会社なんですね!?
世の中には色々な決算書があるものです。僕が今までに見たことがある、マジですか!?と思うような決算書をご紹介します。あなたの会社の決算書はこんなことになっていないですよね(笑)
現金残高1,000万円の試算表
上場準備のための財務調査で訪れた会社での出来事です。
僕>早速ですが、直近の試算表をお願いします
会>これが出来立ての試算表です
僕>どんな感じですかね。。。
総資産2億円、資本金2,000万円、純資産1,500万円、、、
小口現金1,000万円、普通預金400万円、、、、
借入金1.5億円、、、
僕>社長!すごくお金持ちの会社なんですね!?
社>いえいえそれほどでもありませんが、メイン銀行がよく対応してくれますので、、、
僕>事業所が1箇所で小口現金を1,000万円持っている会社はなかなかないと思いますよ
今日現在の現金はどれぐらいお持ちですか?
社>???
2万ぐらいしか持たせないようにしていますが!?
なぜこういうことになるのか
現金残高が実際残高と一致していない。中小企業でときどき見かける現象です。
一番多いパターンは、銀行口座を社長が完全に握っていて、不定期に現金引き出しをしている場合です。次に多いのが、社長自らが引き出しはしていないけれども、社内金庫から「経費用」として引き出しされているパターンです。
引き出すだけなら特段問題ではないのですが、引出金に見合う領収書を会社に提出していないため引出金の顛末処理ができないままとなっているということなのです。
経理上は「現金」や「小口現金」と言った勘定科目ではなく、社長への仮払金なのですが、経理担当者が仮払金処理しないでいたということになります。要するに現金勘定の残高管理を日々行っていないことの証左なのです。
経理担当者に少額の小口現金を預けているわけですが、当然のようにその残高も適切に管理されているとは思えません。聞いてみれば案の定、自分が預っている小口現金も領収書を随時保管するだけで現金残高と領収書残高が一定額になるように管理されていませんでした。幸いにも不正行為はなさそうだったのですが、その会社の管理体制では不正はいくらでもできる状態だったと言えるでしょう。
残高が合っていないのはまだかわいい!?
社長が領収書を会社に提出すれば解決するのかが問題です。引出金が多額になる会社の社長はご自身の手許現金が潤沢ではないからこそ引き出しをするわけです。要するに、引出金はほぼ全額使われて既にないのが通常です。何に使ったかは別として、浮いてしまった1,000万円は会社経費か社長貸付のいずれかと言うことになります。社長自身が資金的に余力があるのでなければ貸付金の回収も簡単にはできません。ざっくり見れば、この1,000万円はすべて経費(損失)ということになります。
こういうときに限って、運転資金が預け入れされている普通預金口座残高よりも実質的に経費(損失)である現金勘定が多くなっているのですよね。しかも、純資産から現金残高を差し引いた実質純資産は500万円しかありません。超低空飛行経営状態です。借入金が1.5億円ですから銀行融資の借換えや追加融資をストップされた段階でかなり厳しいことになります。手形でもあれば不渡りということもありえます。そういえば、この会社、手形発行していました(汗)
こんな状態でIPO?
IPOすなわち証券取引所への上場はこのような財務状態と管理体制でできるのか?
答えは簡単!
『絶対にできません』
金銭出納も十分に管理できていない状態での上場はありえません。この会社も本気でIPOを考えていたというよりも銀行融資の限界を感じ始め、資金繰りの一環としてIPOできないものか!?と発想したようです。銀行融資に苦労する会社がIPOできるということは通常考えられません。
本業の利益体質を確保し、地道に内部留保を進めていれば、銀行が突然、融資をストップすることは通常ありません。内部留保を怠るといつかは融資与信限度に達してしまうものです。会社の持続的成長はやはり内部留保が不可欠ということですね。
この会社がどうなったか?ですか。
それは守秘義務に抵触しますので内緒です(笑)
今回の教訓
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