とんでも決算書2
2009年10月19日 | 資金調達と決算書
なんですか!?この売掛金は??
この会社とは当事務所の無料相談を通じて知り合うことになりました。既に事業を行ってきているとのことなので、面談時に過去2期分の決算書を含む法人税確定申告書一式をご持参いただきました。
銀行からの借入がスムーズにできない
ご相談の趣旨は、最近金融環境が厳しくなったせいか、銀行からの借入がスムーズにできないとのこと。
以前は、銀行の方から「借りてくれ!借りてくれ!」の連呼だったのに最近はすっかり渋くなってしまいました。既存借入の弁済を進めてきたため、手元資金が薄くなってきたので銀行に連絡して、決算書を提出したら返事がなかなか来ないというのです。
さてさてどうしたものか。
なんですかこの売掛金は!?
まずは決算書を拝見。
総資産1.5億円、売掛金6,000万円、借入金8,000万円、資本金1,000万円、純資産50万円。。。売上1.2億円
えぇぇぇと、、、
売掛金の内訳書は、
前期 | 前々期 | |
---|---|---|
A社 | 500万円 | 400万円 |
B社 | 350万円 | 350万円 |
C社 | 250万円 | -万円 |
D社 | 200万円 | 250万円 |
・ | ||
・ | ||
その他 | 4,000万円 | 4,000万円 |
合計 | 6,000万円 | 5,700万円 |
売掛金4,000万円!
あのぉぉ。。。
この売掛金「その他」の4,000万円は???
別記されている売掛金相手先別残高よりも多額の「その他」残高は小口の売上先が多数ある業種でなければそうそうあるものではありません。もっとも、実務上はしばしばみかけることなのですけどね。この場合、表に出したくない相手先が潜んでいたりするものです(汗)
それなんですけど、よくわからないんですよね。
昔からずっとそうなっているようです。
要するに滞留売掛金ということですね!
その他に滞留している相手先はありませんか?
B社が3年前に倒産しまして、その350万円も滞留しています。
あらら。。。
そのことは銀行も知っているのですか?
はい。知っています(涙)
年商の半分が売掛金というのはどう考えてもおかしな状態です。
銀行もこの4,000万円は回収できない売掛金とみなしていることは間違えないでしょう。
実質純資産はいくらになるのか
現在の銀行は貸借対照表の内容を精査して融資判断を行っています。不良資産を損失処理していなければ、見かけ上の純資産はプラス、すなわち資産超過になります。
資産超過の状態は資産を負債よりも多く持っている状態なので、万が一の場合であっても資産を処分することで負債(銀行からの借入など)を全額弁済に充当できることになります。しかし、資産の換価手続で現金化できない不良資産はないに等しいわけで、その分を割り引いて計算した実質純資産を銀行は重視しています。
この会社の実質純資産を銀行の目線で計算してみると、
実質純資産=(表面)純資産-不良資産
=50万円-(4,000万円+350万円)=△4,300万円(債務超過)
要するに銀行からすれば、4,300万円分の貸倒が生じる可能性がある会社と言うことになってしまいます。表面上の内部留保もゼロ(950万円の資本欠損)の状態なのですから、貸したくても怖くて貸せないということになっているわけです(TT)。
ところでこの売掛金の正体はなんだ?
もう一度お伺いしますが、この4,000万円の実態はどのようなものなのですか?
・・・・・
あのぉぉぉ。。。
以前に倒産してしまった会社に対するものと、、、、
お化○ですか?
はい(涙)
そうしないと借入ができなくなってしまうと言われたもので、、、
税法の取り扱いよりも資金繰りを優先
税法上は、債権の貸倒損失の損金算入時期が限られています。倒産であれば倒産した年度に損失処理しなければならないことになっているのです。このタイミングを逃すと税法上の費用処理ができないというのが原則です。
しかし、損失計上したら
赤字 ⇒ 債務超過転落 ⇒ 融資を受けられない ⇒ ヤバイ ⇒ 処理しない
という思考になってしまうのです。
損失処理するかどうかは別問題として、不良債権を放置することで、融資の継続はしてもらえるかもしれませんが、その結果、会社の損益構造を見直すタイミングを逸してしまうことも多いのです。このことの方が大問題と言えますね。
お化○は論外です。
無料相談なのにかなりシビアな話になってしまいました。
本気で経営改善する覚悟があるならもう一度お出でくださいと申し上げて面談を終了しました。
その後その社長が再訪したか?ですか。
それは守秘義務がありますので、ノーコメントです(笑)
今回の教訓
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