消費税の納税義務の有無
2009年10月14日 | 税金の基礎知識
消費税は消費者が最終的に負担する構造になっています。負担と納税義務は区分して理解しなければなりません。納税義務というのは、誰が国に消費税を納付するかということを意味しています。
消費税の納税義務者
消費税の納税義務者は次の2者です。
国内取引 課税資産の譲渡等を行う事業者
輸入取引 課税貨物を保税地域から引き取る者
国内取引に関する納税義務は「事業者」に限定されます。事業者とは、会社と事業を行う個人と理解していただいてほぼ間違いありません。
これに対して、輸入取引に関しては、「引き取る者」とされ、「事業者」に限定されていないことに注意したいところです。個人であっても輸入貨物を引き取るときに消費税を納税しないといけなくなる訳です。
小規模事業者の納税義務の免除
消費税の納税義務は上記の通りですが、厳密には上記の納税義務者の中でも消費税を納税しなくてもよい場合があります。これが小規模事業者の納税義務の免除制度です。
事業者のうち、次の条件を満たす者については、消費税の納税義務が免除されることになっています。
1.その課税期間の基準期間の課税売上高が1,000万円以下であること
2.課税事業者の選択を行っていないこと
これは事業規模が小さい事業者に消費税の納税事務負担を軽減するという配慮から設けられた制度で、この条件を満たす事業者はいわゆる免税事業者として消費税の納税を行う必要がなくなります。逆に、消費税の還付を受けることもできなくなる点に注意が必要です。
新設法人の特例
設立1期目と2期目の法人には基準期間の課税売上高はゼロ円です。すべての新設法人は小規模事業者の納税義務の免除制度を適用できるのか?とお考えの方は鋭いですね。
しかし、それほど税法は甘くありません。
もともと小規模事業者の特例は事業規模が小さい零細企業の事務負担を軽減することを目的としたものですから、資本金1億円でスタートするような大規模法人に適用するのは趣旨に反します。
そこで、消費税法では、事業年度開始の日の資本金が1,000万円以上の法人については、小規模事業者の納税義務の免除制度を適用できないことになっているのです。
会社法施行前の株式会社には最低資本金が設定されていました。株式会社は1,000万円以上の資本金でなければなりませんでしたから、株式会社を設立すると無条件に設立1期目と2期目に納税義務が課されていた訳です。
会社法ではこのような最低資本金制度を設けませんでしたので、資本金を1,000万円未満にして株式会社を設立すると少なくとも第2期までは消費税の納税義務が免除されるということになります。
また、上記の取り扱いはあくまでも新設法人についてのみ定められたものです。個人事業を開始した場合にも当初2年間は基準期間の課税売上高はゼロ円です。個人事業に対して特別な制限はかけられていないので、2年間消費税の納税義務が免除されることがあります。
納税義務の有無まとめ
区分 | 基準期間の課税売上高 | 課税事業者選択 | 期首資本金 | 納税義務 |
---|---|---|---|---|
個人事業 | 0円 | あり | - | あり |
なし | - | なし | ||
1,000万円以下 | あり | - | あり | |
なし | - | なし | ||
1,000万円超 | あり | - | あり | |
なし | - | あり | ||
法人 | 基準期間がない | あり | 1,000万円以上 | あり |
1,000万円未満 | あり | |||
なし | 1,000万円以上 | あり | ||
1,000万円未満 | なし | |||
1,000万円以下 | あり | - | あり | |
なし | - | なし | ||
1,000万円超 | あり | - | あり | |
なし | - | あり |
悪知恵はいけません
新設法人の特例を利用して、会社の設立を繰り返して実態が同一の事業をあたかも新しく事業を開始したかのように装えば消費税の納税義務を回避できるのか!?という悪知恵をめぐらせている方にお伝えしておきます。
このような考えはやめましょう。消費税法の脱法行為として逮捕されたと時々報道されています。税務署はそんなに甘くありません。
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