コラム

税込経理と税抜経理

2009年11月25日 | 税金の基礎知識

消費税の経理方法について整理しておきたいと思います。決算書や試算表を作成する上で、消費税の処理方法には税込経理方式と税抜経理方式の2つがあります。

経理方法の概要

税込経理は、消費税を取引本体価格に含めて処理する方法です。
税抜経理は、消費税を取引本体価格から分離して処理する方法です。

たとえば、本体価格100,000千円の売上があるとしましょう。このとき、試算表や決算書では売上高は次のように表示されることになります。
       税込経理    税抜経理
売上高    105,000千円  100,000千円

税抜経理の方が消費税分少なく表現されます。差異となっている消費税額は「仮受消費税
」という勘定科目で試算表に記録されます。税込経理の方が売上が大きく表現されるので得した気になるかもしれませんが、話はそう簡単ではありません。

税込経理と税抜経理とで何が異なるのか

具体的に税込経理と税抜経理が決算書上でどのような差異が発生するのかを確認しておきます。

税込経理と税抜経理

このように税込経理は税抜経理に比べ、売上総利益が消費税分大きく表示されますが、差額分が販管費の租税公課に計上されます。営業外損益や貸借対照表に消費税に関連する取引がなければ、税込経理と税抜経理は営業利益の計算結果で一致することになります。
実際には、備品を購入しそれが資産計上された場合や営業外損益や特別損益に課税取引が存在する場合、これらの消費税分が販管費の租税公課に混入することになります。一概に、いずれの経理方法の方が営業利益を大きく計算するとは言いにくいものです。
このように税込経理は区分損益計算書の段階利益の計算を歪めるという特徴がありますので、上場会社ではこの経理方法は採用されていません。

税務上の有利不利も多少ある

税込経理と税抜経理とでは消費税の納税額は基本的に一致します。いずれが納税負担を軽減するという特徴はありません。そのため、いずれの経理方法を採用するかは事業者の任意とされています。事業年度ごとの継続性も要求されていません。
しかし、法人税の取り扱いでは、若干差異が発生してしまいます。すなわち、取得価額の計算基準や交際費などの損金算入限度額の計算を税込で行うか否かという差異が生じます。

税込経理を採用する場合、
・ 小額減価償却資産の取得に該当するか否かの判定
・ 特別償却の対象資産かどうかの判定
・ 交際費の損金算入限度額の計算及び不算入額の計算
などをすべて消費税込の計算で行う必要があります。

また、税込経理により決算処理する場合、その年度に取得した固定資産は消費税込の金額で計上しなければなりません。減価償却もその税込の価額で行うことになります。

このように経理方法によって税額計算に差異が発生しますが、それほど多額の差異にはならないことの方が多いと思います。





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