コラム

とんでも決算書7

2009年11月23日 | 資金調達と決算書

決算が近づいてきて利益が多額に計上されるのが予想されることってありますよね。そんなときみなさんはどうされているでしょうか?消耗品を購入する!古くなったパソコンを買い換える!大騒ぎしてものをたくさん購入したことありませんか?

節税対策が必要だ!

大型受注納品があったため、当期は大幅利益ということが時々あります。経営者としては臨時的な利益に対して税金を払いたくないと感じることが多いようです。
決算間際になって節税対策が重要テーマになってしまう会社があります。
今回はそんな会社でありがちな話です。

目標利益圧縮額1,500万円!!

社員に対して購入すべきもの、会社として持っておきたいものをリストアップするように社長から大号令が発せられます。

・ 予備の名入り封筒や営業用名刺
・ 会社案内の追加印刷
・ 文房具の補充
・ プリペイドカードへのチャージ
・ 雑誌広告の出稿
・ 営業用携帯電話の入れ替え
・ 動作が遅くなったPCの入れ替え
・ ホームページのリニューアル
・ 更衣室ロッカーの修繕と入れ替え、、、

社員からはここぞとばかりに細かい要望がリストアップされてきます。しかし、どう積上げても目標金額には達しません。
社員の立場からは「決算賞与ください!」ともいえない訳です。細々した備品類の充実や器具の修繕ぐらいしか社長に提案できないものです。

こんな項目じゃダメだ!

社長は焦るばかり。
こんなチマチマした対策じゃ、税金いっぱいとられてしまうじゃないか!!
長年、節約に節約を重ねて今の会社を作ってきたんだ!
税金なんて払いたくない!
うちには社長車さえないんだから!!
ピーン!!
クルマ買えばいいじゃんv(・・)v

大急ぎでディーラーに行って700万円の新車購入を決定です。

納車は○月○日(決算日)までに必ずしてくださいね!!
絶対ですよ!!

高額物品は一括費用化できないものが多い

決算日を過ぎて会計事務所を交えての決算処理が進められていきます。
社長は業績が好調なのと節税対策もバッチリできたので安心してみていられます。

数日後、仮締めの試算表が完成しました。
売上     30%アップ
営業利益  1,500万円!?

社長の予想では営業利益は500万円以下になるはずだったのです。

なんで1,500万円も利益があるんだ?

会計事務所のスタッフに聞いてみると、雑誌広告は代金が決算日前に支払われていても雑誌の発売が決算日後なので費用にならないとのことだったのです。
さらに、決算月に購入したクルマとPCは減価償却資産なので減価償却費を計上してあるけれど、年間の償却限度額の1/12しか費用計上できないのでほとんど今期の費用にはならないというのです。

ディーラーは一括で売上になっているのに、うちはなんで一括で費用にならないのよ!?

クルマが仕入でそれを期末までに販売したのであれば一括で費用になるけれど、自社で使用されるものは減価償却するしかないとのことでした。

決算月の翌月の支払いが・・・

費用になると思って購入したもののうち、いくつかのものは資産になって節税効果がほとんどなかったわけです。
支払いは納品後翌月末払い!

納税資金がなくなるんだから一括で払っても大丈夫!

まったくの計算違いです。

どうやら資産の購入代金と税金を払わなければならないことになるようです。

あったらいいかも!?は要らないもの

上記は全部架空のお話です。
こんなお間抜けな判断をする社長はいらっしゃらないと思います。

しかし、決算対策として今回のようなアクションをする会社は意外と多くあるのです。
税金を払いたくない一心で社内備品を充実させた方がよいと考えてしまうのでしょう。

あれば便利かもしれない!?というものは通常必要ではないものです。
決算対策として購入したのに使われることもなく埃をかぶっている備品をときどき見かけます。
節税目的で不要不急の備品を購入すると確実に会社の資金は減少します。いくら多いといっても税金は利益の全額にはならないからです。

今回の教訓

  • 支出=費用ではない
  • 決算対策は税理士との協議もした方がよいです
  • 支払方法もよく考えましょう
  • 節税が会社を弱体化させることもある




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