とんでも決算書8
2009年12月9日 | 資金調達と決算書
資本金が大きな会社は、いい会社!!
こんな風に考えている方はいらっしゃいませんかね?
そもそも「いい会社」ってどういう意味なんでしょう?
資本金が9000万円あります
当社の資本金は9000万円あります。
20年地道に増資を繰り返して9000万円にまでしました。
でも、最近、銀行が冷たいというか、厳しいんですよね。。。
取引先にも決算情報の提出を求められることが増えて、提出したら発注金額が少なくなったような気がします。。。
安全な会社か否かは資本金で判断できるのか
新規で取引を行う場合、転職する場合、その会社が安定した会社かどうか気になるはずです。会社の安全性を計るモノサシが欲しいけれどなかなか適当なものが見つからない。。。そんなこと経験したことありませんか?
資本金は登記簿謄本に記載されているため、外部の第三者も比較的簡単に確認することができます。会社のホームページや会社案内にも資本金が明記されていることが多いです。
資本金が1000万円や300万円の会社は多数ありますが、9000万円の会社はゴロゴロしているわけではありません。資本金が大きいと、すごい会社、安定した会社だと一般の方は考えてしまうかもしれません。人によっては、儲かっている会社だと思うかもしれません(**);
そもそも資本金とはどのようなものかというと、
資本として払い込まれた金銭その他の財産の額です。通常は現金として資本金が払い込まれますので、払い込み直後は資本金の額だけの現金がその会社にあったことになります。会社はその資金を元にオフィスを借りたり、仕入れを行ったりするので、現金はすぐに他の形態の財産に変化してしまいます。
事業によって儲けが出れば、会社の財産は増加しますが、赤字が出ると財産は減少してしまいます。資本金払い込み後の会社の財産は、こうした儲けと赤字の合計額で表現されることになります。資本金はあくまでも当初投入されたモトデに過ぎません。
儲けと赤字の合計額はどこをあらわされるのか
さて、この会社の決算書を拝見すると、
繰越利益剰余金がマイナスになっています。しかも、資本金の額を超えるマイナスです。
いわゆる「債務超過」状態です。
儲けと赤字の合計(累計)はこの繰越利益剰余金に集計されることになります。この会社の場合、1.4億円の赤字が累積されてきたということになります。
資本金は会社のモトデでした。モトデを超える赤字が計上できるというのが理解しにくいかもしれませんね。モトデとしての資本金はオフィスの敷金や商品代金に充てられることで他の形態の資産に変化します。会社は、すべて現金決済をしているわけではありません。手許現金がなくても掛け(買掛金)として仕入れを行うこともできますし、金融機関から借入することもできます。これら負債により資金調達することで経営を継続できるため、資本金を超える赤字が発生しても営業自体は継続できるのです。
厳密には違うのですが、純資産の内訳は次のように理解してほぼ問題はありません。
資産超過と債務超過とは
「債務超過」という用語を先ほど使用しました。
債務超過とは何を意味するかご理解されていますか?
貸借対照表では必ず次の関係が成立します。
資産 = 負債 + 純資産
純資産 = 資産 - 負債
債務超過とは負債の合計が資産の合計よりも大きい状態を言います。このとき、純資産の内訳では、資本金を超える利益剰余金のマイナスが生じていることになります。
逆に、資産の合計が負債の合計よりも大きい状態を資産超過と言います。利益剰余金がプラスまたはマイナスが資本金以下の状態ということになります。
つまり、債務超過は、負債を支払うだけの資産を保有していない状態を意味しますから、会社が倒産した場合、資産を処分しても負債の全額の支払いができないことになります。
仕入先や金融機関は債権の全額を回収できない可能性のある会社との取引の継続を嫌います。
会社が資産超過なのか債務超過なのかは、その会社の貸借対照表を見ればわかる訳ですが、実務上、取引先の貸借対照表を入手するのは難しいものです。会社は決算内容を官報等で公告しなければならないことになっていますが、実際にこれを行っていない会社が非常に多いためです。金融機関は融資時に決算書の提出を求めますが、その後の決算書の提出は強制できるものではありません。
外部の第三者が取引を行う場合、資産超過なのか、債務超過なのかは与信上重要問題になりますが、簡単にこれを把握することができないため、登記簿謄本を入手して資本金の額を確認するしか方法がなくなっていることが多いです。
資本金とは何かを正しく理解していれば、資本金の多寡でその会社の信用力を評価しようとは思わなくなりますよね。金融機関のように優位な立場にあるのであれば、定期的に決算書の提供を求めたり、帝国データバンク等の信用調査会社の報告書を入手して財務状態を確認する必要がありますね。
今回の教訓
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