青色申告とは
会社を設立する場合、個人で事業を行う場合に欠かせないのが青色申告。
青色申告とはどのようなものなのか、どのようにすれば青色申告にすることができるのかをご理解されていますか?
青色申告はどのようなものに適用できるのか
法人と不動産所得・事業所得・山林所得を有する個人は、所定の期限までに所轄税務署長に青色申告の承認申請を行い、承認を受けることによって青色の申告書を提出することができる、とされています。青色申告とすることで、税務上の恩典が認められており、節税の基礎の基礎といえます。
法人の確定申告書の表紙(別表1)は通常青い紙が使用され、税務署から送られてくる用紙も青色申告であるか否かに関係なく青い紙となっていますが、税務署長の承認を受けていなければ青い紙の申告書を作成しても青色申告にはなりません。なお、所得税に関しては、青色申告の承認を受けていたとしても青い紙の申告書ではありません(申告書に○をつけるようになっているだけです)。
青色申告にするための手続き
青色申告にするためには、所轄税務署長の承認が必要です。
承認を受けるというと難しそうですが、期限までに所定の書類を税務署に提出すれば簡単に承認を受けることができます。起業される場合や青色申告になっていない場合には、できるだけ早く手続きすべきです。
提出期限と提出書類は次の通りです。
提出期限(抜粋要約) | 提出書類 | |
---|---|---|
法人 |
|
青色申告の承認申請書 |
個人 |
|
所得税の青色申告承認申請書 |
上記の提出期限が、土日祝日の場合には、その翌日が期限となります。郵便による提出もできますので、忙しい時は返信用封筒を必ず同封して郵送されることをお勧めします。なお、郵送の場合の提出は消印日付となります(信書扱いにならない宅配便は税務署到着日となりますのでご注意ください)。
また、提出書類と厳密な提出期限はリンク先の国税庁HPから入手できます。
基本的には青色申告の承認申請は提出すれば承認されるのですが、以下の場合には却下されることがあります。
- 帳簿書類の備え付け、記録保存が適切に行われていない場合
- 帳簿書類で取引を隠蔽仮装していたり、不実の記録があると疑うだけの相当の理由がある場合
- 青色申告取消通知を受けた日から1年を経過していない場合
- 青色申告の取りやめの届出を提出した日から1年を経過していない場合
1と2は形式的には判断できない問題ですし、かなり悪質と税務署にマークされている場合ですから通常は気にする必要がありません。3と4の形式基準に抵触していなければ承認申請は承認されることになります。
青色申告の義務
青色申告の承認を受けるための条件として法人及び個人は、次の条件を満たす帳簿を作成・保管しなければなりません。
- 複式簿記の原則に従い明瞭かつ整然とすべての取引を総勘定元帳及び補助元帳に記録すること
- 貸借対照表及び損益計算書を作成すること
- 取引の根拠となる預金通帳、領収書や請求書などを保存すること
- 棚卸表を作成すること
厳密には法令上、法人と個人とでは上記帳簿要件の定め方は異なりますが、ほぼ同様と考えてよいです。
複式簿記の原則とか総勘定元帳云々とされていますが、通常の簿記の処理を行えば問題なくこれらの条件を満たすことができます。
青色申告の取消
青色申告は税務署長によって承認されたものなので、納税者が義務を果たしていない場合には、税務署長はその承認を取り消すこともできます。具体的な取消事由は次のようなものです。
- 帳簿書類を法令にしたがい記録・保存されていない(法廷保存期間を無視して廃棄してしまったなど)
- 帳簿書類を隠蔽・仮装して記録を行い、帳簿書類の全体の真実性が疑われるだけの相当な理由がある(請求書や契約書を偽造したなど)
- 法定の提出期限までに税務申告書を提出しなかった
注意しなければならないのは、申告期限までに申告書を提出しなかった場合です。期限が画一的に定められているため、恣意性が介入する余地はありません。実務上は、2期間連続で申告書を提出しなかった場合、及び2期間連続で期限までに申告書を提出しなかった場合に青色申告の取り消し処分が行われています。
青色申告の特典(法人)
法人税での青色申告の特典として次のようなものがあります。
- 青色申告書を提出した事業年度に生じた欠損金を翌年度以降7年間繰越ができる(将来生じた利益と相殺することができる)
- 中小法人に関しては、還付申告することで欠損金の繰戻還付を受けられる(前年度に納めた法人税の一部を赤字年度に還付してもらえる)
- 税務署による更正処理を受けられる(申告期限から2年以上5年以内の年度の誤りを税務署の職権で修正してもらえる)
- 税務署は更正通知書に更正の理由を付記しなければならない
- 税務署は推計による更正や決定を行うことができない
- 租税特別措置法に定められる特別償却や法人税の特別控除などを適用することができる
- 税務署に更正をされた場合、異議申し立てと直接審査請求を選択することができる
中小企業では、欠損金の繰越控除は非常に大きなメリットです。青色申告法人でない場合には、当期が1,000万円の赤字で翌期が1,000万円の黒字であったときは、翌期は1,000万円の利益全額に対して法人税が課税されることになります。青色申告法人の場合には、当期の赤字が翌期に繰り越され翌期の利益と相殺されるので、法人税が全く課税されないことになります。
推計課税による更正というのは、飲食店で捨てられる割り箸の数やおしぼりの数を数えて客数が概ね何人で、客単価いくらだとすると、売上はこれぐらいあるはずだ!というやつです。客観的なようで全然客観的ではない推計で売上計上漏れ(売上の脱税)をしたものとみなす処分がされないということですね。
更正・決定の理由付記と異議申し立て制度は、税務調査の際に何気に大切なカードとなります。「修正申告はしませんから、どうしてもおかしいと言われるなら更正してください!」という一言はかなりの効果を持ちます(笑)
青色申告の特典(個人)
個人の所得税に青色申告の承認を受けている場合には、次のような特典があります。
- 先従者(家族従業員)給与を全額必要経費にできる
- 純損失を翌年以降3年間繰り越し控除できる
- 前年分の所得に関する所得税から所得税の繰戻還付をうけることができる
- 帳簿調査に基づかない更正を受けることがない
- 税務署は更正通知書に更正理由を付記しなければならない
- 税務署は推計による更正・決定を行うことができない
- 所得計算上で引当金の計上が認められる場合がある
- 棚卸資産の評価を低価法により行うことができる
- 青色申告特別控除(最高65万円)を受けることができる
- 租税特別措置法に定める特別償却や所得税の特別控除などを受けられる
- 税務署に更正をされた場合、異議申し立てと直接審査請求を選択することができる
青色申告は節税の基礎であり、税務当局と紳士的に対応するための基礎
青色申告について、基礎的なことをざっと鳥瞰してみました。
専門用語がわかりにくい部分があったかもしれませんが、決して高度に専門的な知識がなければ青色申告を維持することができないということはありません。
きちんとした帳簿を作成できなければ、会社や事業の収支を把握することができなくなってしまいます。
青色申告は、税務の基礎であると同時に経営の基礎なのです。
是非、青色申告の承認を得て、着実な経営を行っていただきたいと思います。
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