法人税の税率構造を理解する
2010年1月6日 | 税金の基礎知識
法人税と一言で言っても非常に複雑な構造になっています。
これは国税としての法人税のほかに地方税としての都道府県民税と事業税が別途課税されるためです。加えて法人税と事業税には軽減税率が設けられており余計複雑です。
経営者としてはこれらの詳細をすべて理解している必要はありませんが、構造と特徴は理解しておくべきです。
法人税の実効税率はどの程度なのか
経営者として理解しておきたいのは、会社の利益に対してどれぐらいの法人税が課税されるのかということだと思います。次のグラフは会社の所得水準とこれに対応する法人税の実際の税率を関係です。所得と利益は厳密には一致しませんが、ここでは一致するものとみなしています。
ご覧頂くと所得水準に応じて、実効税率が逓増していることがわかります。これは資本金1億円以下の法人は年800万円までの所得について軽減税率が適用されること、事業税に関しては軽減税率不適用法人以外の法人について年800万円以下(年400万円以下の所得はさらに軽減)の所得に対して軽減税率が適用されることによります。
このように大規模な事業を行っていない中小法人のために税負担が軽減されています。新聞等では法人税の実効税率は約40%とされていますが、年間所得が5000万円以下の場合でも40%に達していないことがわかります。
1000万円以下の所得の場合どのようになっているのか
一般的な中小企業で5000万円もの所得を計上していることは稀だと思います。そこで、所得1000万円までの実効税率の推移を作成してみると以下のようになります。
所得400万円までは一定の税率で、400万円を超えると微増し始めます。そして、800万円を超えると急激に増加していることがわかりますね。これが軽減税率の影響です。
従来400万円ぐらいの利益を計上していた会社が、臨時的な要因で1000万円以上の利益を計上して、異常な重税感を感じるのはこのような構造によるものなのです。
具体的な税率はどうなっているのか
実際の税率は次のようになっています。
法人所得 | 適用税率(注) |
---|---|
年400万円以下 | 24.8% |
年400万円超年800万円以下 | 26.4% |
年800万円超 | 40.9% |
たとえば、年法人所得が1000万円である場合、400万円までは24.8%で課税され、400万円超800万円までは26.4%で課税され、さらに800万円超の200万円には40.9%で課税されるということです。
法人税額 = 400万円×24.8% + (800万円-400万円)×26.4% + (1000万円-800万円)×40.9% = 286.6万円
所得税が累進税率であることはよく知られていますが、法人税も実質的に累進税率になっている訳です。
中小企業は軽減税率を上手に利用しましょう
中小企業の節税手段としては、これら法人税の軽減税率を上手に利用していただきたいものです。数年間の利益のトレンドが異常にデコボコしているような場合、軽減税率の適用範囲を飛び越えて大企業並みの課税を受けてしまうことがあります。このようなデコボコを計画的に平準化することができれば確実な節税になります。
計画的な利益のコントロールを行う上では、決算月にドタバタ買い物をする会社もありますが、確実な月次決算と予算統制が不可欠です。あなたの会社は上手にコントロールできていますか?
法人税額のシミュレーションワークシート
実効税率は地方税を考慮して計算します。会社がどこにあるかで実効税率も変動してしまいます。
そこで、本稿で利用したシミュレーションワークシートを無料でご提供します。
是非お試しください。
(注)
本稿のデータは、東京都23区内に本店があり、資本金1000万円以下、事業所は1ヶ所で年間所得が2500万円以下である法人を前提としています。これらの条件が変わると上記の税率は変化します。所得に関係なく課税される均等割は考慮外として解説をしています。
Tweet