節税と決算月
2010年1月27日 | 税金の基礎知識
多くの経営者が無駄な税金は払いたくないと考えています。
生命保険など節税対策として色々な手法がありますが、どうしても決算間際にドタバタしてしまいがちです。今回は決算月と節税の関係についてお話します。
決算月にドタバタ劇をしていませんか
今期は多額の利益が出そうだ!
このままでは税金がとんでもない金額になってしまう!
何としても税金を払いたくない!!
特需のような売上があったがあった場合、営業政策が奏功して決算の追い込みが予想外に進捗してしまったが、来期も同じようになる保証はない。
こんなときあなたは税金を払うことを選びますか?
多くの経営者は、来期の保証がないところで税金は払いたくないと考えられることでしょう。税金を払いたくないと気持ちが固まると何がなんでも税金を圧縮するための節税手法が頭を駆け巡ります。
タラレバ話をしてもどうにもならないので、次善の策を考えるしかありません。
こうして決算月に矢継ぎ早に買い物をした経験ありませんか?
ほとんどの節税対策は資金の社外流出を伴う
税金を圧縮するために買い物をすることで確かに税金は圧縮できるかもしれません。
しかし、確実に節税額以上の資金流出を発生させます。
節税対策前の予想利益が1000万円、法人税等の実効税率が40%だとします。
税金を何としても100万円にしたいと経営者が考えたとします。
この場合つぶさなければいけない利益は750万円ということになります。
節税対策費用=節税対策前予想利益1000万円-節税対策後予想利益250万円
節税対策後予想利益=100万円÷40%=250万円
資金の動きは次のようになり確実に資金が社外流出してしまいます。
決算月でのドタバタ節税対策は多くの場合、このように会社資金を枯渇させてしまうものです。
来期がどうなるのか不透明だからというのが節税の当初目的であったはずなのに、会社の資金が失われてしまう結果になっています。
経営的にこれでよいのでしょうか?
問題の本質は「もっと早くわかっていれば」
中小企業では経営者の財務力と会社の財務力は一致していると考えることができます。
経営者に多額の役員報酬を支払えば、確かに会社の資金は減少しますが、経営者が得た報酬をプールしてあれば実質的に資金流出していないことになります。
しかし、役員報酬は定時株主総会で決定するものなので、決算間際に遡及して増額しても法人税法上の費用とすることができません。これが中小企業経営のジレンマです。
節税対策を難しくしているのは、決算間際になって予想外の利益が見込まれることではないでしょうか。そのような状況になることが、「もっと早くわかっていれば」ドタバタ節税対策をしなくても済むこともあるのではないでしょうか。
事業内容によっても事情は異なると思いますが、住宅系建設業や小売業のように売上に季節性がある業種があります。官公庁予算に影響を受ける業種もあることでしょう。
これら売上に季節性がある場合で、売上のピークになる月を決算月にしていたら次のような構造になっていませんか?
売上のピークが景気に左右されやすい場合、年度末の売上や利益の水準を年度始めに予測することは困難です。妥当な役員報酬はいったいいくらなのかもわかりません。要するに年度始めにはその事業年度の業績が全く不透明な状況で役員報酬を設定してスタートしなければならないことになります。場合によっては、節税するつもりで設定した役員報酬によって赤字決算になってしまうこともありえます。
このようなことになってしまうのは、年間の業績を見通すことができないことに原因があります。うまく業績を伸ばすことができたとしても決算間際に情勢が明らかになることでドタバタ節税対策によってかえって余分な資金流出をしてしまうのではないでしょうか。
そこで、次のように年度始めに売上のピークが来るように事業年度を設定したらどうでしょうか。定時株主総会で役員報酬を設定する時期に売上がピークになるのなら、役員報酬をいくらにすればよいかも相対的に決定しやすくなるはずです。決算間際にドタバタして必要のない買い物をする必要もありません。
そればかりか、じっくり時間を掛けて節税の手法を検討することができるようになります。
無駄なお金を社外流出させない、効果的な節税を行うという観点からは、上記のように決算月を設定するというのもひとつの方法だと思います。
決算月にドタバタしてしまうのは、それまで業績がどのようになるのか判然としないことが大きな原因なのです。そうであれば、決算数字をコントロールしやすい決算月にしてしまうというのも考え方としてはありえると思います。
決算月を変更しても月次決算のタイミング・精度が低ければ意味がない
決算月は、定款記載事項なので株主総会の決議によって変更することができます。当期事項ではありませんから、株主総会でその要否を審議するだけでよく、追加費用は発生しません。変更したら株主総会議事録を添付して税務署に異動届を提出するだけです。
こうして節税目的で決算月を変更したとしても、次のような会社では効果的な節税を行うことができません。
もし、このような月次決算ではいくら節税目的で利益を圧縮すればよいのか判断することができません。
会計事務所に記帳代行を依頼している場合でこのようなことになっているとしたなら、何のために依頼しているのかわかりません。会計事務所さんとよーくお話をする必要がありますね。
Tweet