確定申告していれば外注に対する源泉徴収はいらないのか
個人で事業を行っている外注先への支払に源泉徴収は必要なのか、必要ではないのか。しばしばトラブルになる問題です。
個人外注への源泉徴収は必要なのか
個人で事業を行っている人に仕事をお願いすることもしばしばあるかと思います。
この際、源泉徴収が必要なのかどうかが問題になることがあります。
このような反論を外注先から受けたことはないでしょうか?
支払先が個人の場合、源泉徴収が必要なときと必要ないときがある
給与以外の個人への支払について源泉徴収が必ず必要なわけではありません。たとえば、個人が経営する小売店で物を買ったからといって源泉徴収するなんてことはありません。
個人への支払で源泉徴収が必要な場合は、所得税法及びその通達によって定められています。その内容は以下の国税庁のHPをご覧ください。
これらは、限定列挙と理解していただいて結構です。
したがって、これらに列挙されている業務を個人外注に行ってもらった場合には、支払者に源泉徴収義務が発生し、必ず源泉徴収を行わなければなりません。支払先が青色申告だとか、確定申告しているか否かは一切関係ありません。源泉徴収をしなかった場合、支払者は源泉徴収義務違反をしたことになります。
源泉徴収は資金繰りの問題
外注先からすれば、源泉徴収そのものが所得税を多額に課税されているように捉えてしまうことが多いようです。
しかし、源泉徴収をされるか、されないかで、税金が増えるわけではありません。
事業所得として事業を行っているのであれば、小額の収入であったとしても確定申告しなければならないことになっています。
源泉徴収税額は、所得の支払者を通じて国に事前に納税されており、確定申告時に納付済み税額として年税額から控除(精算)することになります。
つまり、税金を先に払うか、確定申告時に払うかという資金繰りの問題に過ぎません。源泉徴収が行われていなかった場合、確定申告でかなりの納税を行わなければならないこともあり得ます。
もっとも、個人事業者としては資金繰りの問題なのですが、源泉徴収させるか、させないかを選択することは認められていません。これは、支払者に源泉徴収義務が課されているためです。本来源泉徴収が必要なところを、源泉徴収せずに支払ってしまった場合、支払者は後日税務調査で指摘されれば未納付の源泉税を納税しなければなりません。付帯税も課税されます。
支払者に納税負担があるわけではないので、後日支払先である個人外注先は源泉税の請求を支払者から受けることになります。このことは個人外注先が既に確定申告で源泉税見合い分を納税していても回避することはできませんので注意が必要です。個人外注先は、支払者に源泉税分を返還したのち、国に還付請求しなければならないことになり非常に煩雑な対応が必要となってしまうのです。
ちなみに、支払者に対する税務調査においては、個人支払先を記録しています。所轄税務署でその個人が確定申告を行っているか否かを都度確認しているのです。その個人事業主の他の取引先に対する税務調査の要否も同時にチェックしていると思った方がよいでしょう。意地になって源泉徴収を拒否すると意外なところで、顧客を失うことにもなりかねないです。
源泉対象業務とその他が混在している場合
一覧表をよく見ると今ひとつ釈然としないのではないでしょうか。
たとえば、ホームページの制作を個人の人に行ってもらった場合です。
ホームページの制作はhtmlやCSSなどのWEBサイト用言語によりある一定の表現を達成するものですが、これら言語によるコーディングのほか、企画やSEO・SEMなどのコンサルティング的要素をデザインにより実現するものです。サイト構築にあたっては、各種グラフィック(挿絵?)作成も行われます。場合によっては写真や動画の撮影、テキストのライティングも行われます。
一方、外注先の大半の作業はコーディングであったりします。コーディングやプログラミングは、先の一覧表に掲記されていません。
HP制作業務は源泉対象業務と源泉非対象業務が混在した業務ということができます。
このような場合、どのように取り扱うべきなのでしょうか!?
税務実務では、契約書等にどのように記載されているかによって源泉の範囲が決定されることになります。すなわち、契約書等でデザイン業務●●円、コーディング業務●●円のように区分され、その区分額が適正な額であるならば、デザイン業務分についてのみ源泉徴収する必要があることになります。逆に、「HP制作一式」のように区分が行われていない場合には、デザイン料が含まれていることは否定できないので、総額に対して源泉税を計算しなければならなくなる可能性が高くなります。
源泉徴収税額を軽減したいのであれば、業務ごとに料金を区分した契約書等を作成しておく必要があるでしょう。
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