粉飾決算とは
2010年7月21日 | 中小企業と経営 / 資金調達と決算書
粉飾決算の財務的本質
粉飾決算事件が最近新聞に載ることが多いです。
新聞に載るような会社はみんな上場会社なので、規模が大きく、社会的な影響も大きな会社です。
これらの会社は、公認会計士ないし監査法人の会計監査を受けている訳ですが、監査人の目をかいくぐってお化粧をしてしまったのです。
ここでは監査人の監査が適切であったかどうかは問題にするつもりはありません。
もちろん、粉飾指南を行うつもりもありません。
善からぬことを考える人が出ると困るのでテクニックについては説明しませんので悪しからずです。
粉飾という決算書のお化粧をするとどういうことになるかを概観しておきたいと思います。
粉飾という言葉はよく耳にしますが、その本質を理解されていますか?
・売上を大きく見せる
・原価を少なく見せる
・経費の計上を遅らせる などなど
これらはみな粉飾のテクニックであって、本質ではありません。
粉飾決算の本質は、
純資産(資本)の部を膨らませることにあるのです。
お解りになりますか?
粉飾決算は貸借対照表から考える
純資産(資本)の部と資本金は似て非なるものです。
資本の部ってナニ?という方もおられるでしょう。
単純に言えば次のような関係にあります。
純資産の部(資本)
=資本金+資本剰余金+利益剰余金(内部留保)
資本金と資本剰余金は会社を始めたときに打ち込んだ元金。
利益剰余金は設立後会社が稼いだ利益のうち社内に溜め込んだ額。
資本金と資本剰余金は通常増資をしない限り増えないので、粉飾決算を行うためには、内部留保を見かけだけ増やすことと言い換えることができます。
では、内部留保を増やすためにはどうするか?
決算書をイメージして下さい。
決算書は大きく貸借対照表と損益計算書から構成されています。
純資産(資本)の部が記載されているのは貸借対照表の方です。
貸借対照表には資産と負債及び純資産(資本)の各部が記載されています。
資産=負債+純資産
という関係にあります。
つまり資本を増やすためには、資産を膨らませるか、負債を減らすしかないのです。
厳密な話をすると大変なことになるので、そういうものとここでは理解しておいて下さいね。
粉飾の目的は利益を実際よりも多く見せること。
売上を増やせば利益が増えますが、同時に売掛金という資産を増やさなければ経理上辻褄が合わなくなります。
仕入を少なく見せるためには、買掛金を少なくしたり在庫を増やしたりしなければならないという関係になるのです。
このように粉飾決算を行うと必ず、貸借対照表の
資産が膨らんでいるか、
負債が小さく計上されている
ということを理解しておくといいでしょう。
なお、負債を過少計上するというのは案外難しいので、資産が膨らんでいる場合の方が多いです。
損益計算書では考えない方がいいのです。
今回はこのことをよーーーく覚えておいてください。
新規取引を行う取引先や既存取引先の決算書を見る機会があれば、こうした観点で見てみると以外とおかしなことが見えてくるもの。
不渡りをもらったりしないように常に注意しておく必要があります。
本稿は「うちの事務所での出来事」のバックナンバーを加筆修正したものです。
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