サイバー税務署が来た(その1)
その日は突然に来た
(人)こんにちは!
(従業員)いらっしゃいませ!
(人)国税局のものですが!!!
(従業員)???汗
(人)このホームページを運営しているのはこちらでよろしいでしょうか?
(従業員)オーナーが今不在なので。。。。汗汗
(人)待たせてもらいます!
(従業員)・・・・・・・汗汗汗
今ではうちの顧問先で実際にあった話。
その日は突然に来た。
数年来運営してきたホームページを見て税務署さんが来たのである。
いや、税務署ではなく国税局が来たのである。
国税局と言えば各地にある税務署を統括している税務署の上位機関。
集客のため、販売のため、一生懸命作ってきたホームページ。
見ているのはお客さんだけではなかったのだ。
このお店の場合、ホームページでの販売だけではなく、店舗でも販売を行っていた。
ホームページには店舗所在地と丁寧な地図が記載されていたわけだが、国税局さんはそれを見てご来店。
(国)ホームページを拝見する限り、事業を行われているようですが、確定申告はどのようにされているでしょうか?
(国)あなたが提出した確定申告書が役所の中で見あたらないので、念のために確認に参りました。
(オーナー)ギク!?
(オーナー)・・・・・・・
(国)確定申告書は????
(オーナー)してません(グスン)・・・・・
この人、実は当時、商売をしているにもかかわらず確定申告をしていなかったのだ。
商売を営んでいる人は、個人事業者として毎年確定申告をしなければならないことになっている。
このオーナーも一応このことは理解していた。
でも、うちみたいに小さいところはバレないだろう、、、、という甘い期待を持って商売を続けていたのである。
いきなり税務調査開始
(国)商売をしている人は確定申告をしなければいけないことになっていることはご存じですか?
(オーナー)・・・・・・
(国)帳簿を拝見できますか?
(オーナー)(ギク!)ありません
(国)何にもないのですか?
(オーナー)えーと、ありません。ごめんなさい。
(国)では、あなたの事業の状況を確認させて頂きたいのですがよろしいですね?
(オーナー)わからました・・・・
これで無申告者に対する税務調査の開始となったのである。
この小店主、税務署という人たちと話をしたことがない。
どうしたらいいのかさっぱりわからない。
税務署の人たちが言っていることはよくわからないし、自分が答える内容が自分にとって有利なのか不利なのかもわからない。怖い。
元手20万円から始めた小さな事業。ようやくお客さんにも認知され始めギリギリながらも収支が合い始めた矢先のことだった。
オーナーは困り果てて、人づてに僕に辿りついたのであった。
聞くと、国税局ではいわゆる”サイバー税務署”というネット関連取引を重点的に調査確認する部署ができたとのこと。
サイバー税務署では、ホームページで商売をしている事業者に対し、その申告内容を確認するためローラーをかけているというのだ。
今回のオーナーさんは、このサイバー税務署のお眼鏡に止まったわけだ。
ネットだからバレないなんて甘い
「ネットだからわからない」と考えるのは甘い。
税務当局もネットビジネスに対して課税漏れを発生させないように一生懸命仕事をしているのである。
特に、この数年ネットビジネスが急激に拡大してきている。
インターネットオークションやECサイト、アフェリエイトなど、表面的には確認し難いビジネスの確認・点検が重点的に行われているようである。
無申告が発見されてしまった小店主。
いきなり税務調査が始まってしまった。
(国)レジの売上集計表はありますか?
(国)ネットで販売した売上金はどのように回収していますか?
商売用に使っている銀行口座、レジペーパーなど保存されていた書類を片っ端から確認が始まった。
小店主はビクビクしながら依頼される資料を提出していく。
小売業だから売上は非常に細かく多数のデータになるが、調査官もテキパキと集計をこなしていく。
数日後、3年分の売上のほぼ100%が把握されてしまった。
(国)各年の売上額はこの金額で間違えないでしょうか?
(オ)ええええ・・・、こんなにあるんですか!
(国)ご呈示いただいた資料によるとこうなりましたが、、、
(オ)この月はこんなにあるのかな?
(国)これとこれを足すとこうなりましたが。。。
(オ)ホントだ?!
なんと、オーナーさん、自分の商売の売上を正確に認識していなかったのである。
日々の営業と支払にばかり頭を使っていたので、年度ベースの売上が頭からスコンと抜けていたらしい。
資金繰りで頭が一杯というのは開業当初ではありがちなことだ。
(国)今度は経費なんですけど、、、
(国)毎月の支払の根拠書類はありますか?
(オ)仕入の書類はこれです
(国)仕入以外の経費は?
(オ)領収書とかですか?
(国)給与明細や領収書とかです
(オ)領収書は捨ててしまったものが多いんですが・・・
(国)困りましたね・・・
(国)では、毎月どのような経費をどれぐらい使っていたか教えて下さい
でました、推計課税です。
このオーナーは確定申告をしていなかったので、青色申告にならないのです。
青色申告ではない=>白色申告=>推計課税に文句が言えない=税務当局は概算で所得(利益)を計算して課税処分できるということになっているのです。
あんな費用、こんな費用・・・・
オーナーはひたすら項目と金額を列挙します。
覚えている限りの支出を列挙しないと、費用が少なくなってしまいます。
こういう支出が・・・と適当な金額を提示しても、そんなにかかりますか?と切り替えされてしまいます。
経費というやつは家賃のように毎月固定額なわけではありません。
ポロポロ抜けてしまう可能性が高いのです。
帳簿管理をしていなかったつけがこんなところにも出てきてしまうのです。
本稿は「うちの事務所での出来事」のバックナンバーを加筆修正したものです。
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