コラム

平成23年度税制改正大綱発表

2010年12月17日 | 税金の基礎知識

今年も税制改正大綱が発表される時期になりました

平成22年12月16日に税制改正大綱が公開されました。
首相官邸のHPからダウンロード(右クリックでダウンロード)することができます。といっても例年のことながら全部で135ページの大作です。素人が読み解くにはちょっと厳しいかもしれません。

そこで、雑感となってしまいますが、私なりの印象をコメントさせていただきます。

今年は複雑怪奇なものではない

平成22年度税制改正ではグループ法人課税という新しい制度が導入されたこともあって、大綱の内容も非常に複雑なものでした。税理士が読んでも、何を言ってるの?という部分が多々ありました。
これに対して、今年の大綱は非常にシンプルな内容のように思われます。

中身の方といえば、はっきり言って増税ラッシュのように見えます。

相続税

特に、相続税関係の増税はかなりのものではないでしょうか。
現行法では、基礎控除は5000万円+1000万円×法定相続人の数、で計算しますが、これが3000万円+600万円×法定相続人の数、に変更されるとのことです。
配偶者一人子供一人の世帯で相続が発生した場合、これまでは7000万円の基礎控除があったわけですが、4200万円に引き下げられることになるわけです(配偶者控除は無視しています)。
持ち家と預貯金をある程度保有している人に相続が発生すると相続税の申告納税義務が発生する可能性が高くなるわけです。

贈与税

他方で、贈与税が減税方向で改正されるようです。
税率構造を緩和し、基礎控除を拡大するとされています。これは、高齢者が保有する資産を若年世代に早期に移転させるという趣旨なのでしょう。資産家であればよいのですが、自分自身の老後の生活に不安を感じている高齢者がどれだけ次の世代に資産移転を行うのか?という疑問もありますが。。。

所得税

個人所得税についても増税方向です。
これまで青天井だった給与所得控除にキャップをかけるという議論は昨年の税制改正議論の中にもありましたが、結局消えてしまった経緯があります。これが一年後に再登場し閣議決定まで持ち込まれました。年1500万円を超える給与所得がある場合には、給与所得控除は245万円で頭打ちとされています。役員である場合には、これを圧縮するという別枠規制も盛り込まれています。平成22年度税制改正大綱で廃止が明記された特殊支配同族会社の役員報酬の一部損金不算入制度に関連して、「二重控除問題を解消する抜本的措置を講じる」という平成22年度税制改正大綱の恨み節がこんな形で処置されたわけです。超零細企業に対する一点集中課税が中小大企業の役員にまで広げられた形になります。
税理士として違和感を感じたのは、役員の範囲に「国会議員(地方議員)」と「国家公務員(地方公務員)」が含められている点です。政府はこれらの者も給与をお手盛りしていると考え、優遇を排除しようとしたようです。退職金課税に関しても「渡り」対策が講じられているのが政治色を感じます。

法人税

さて、法人税関係は減税なのか増税なのかよくわかりません。
確かに税率は5%程度引き下げられるのですが、その財源を法人税の中で賄ったものが多々あります。租税特別措置法(祖特)の見直しにより財源を捻出したり、減価償却制度の修正によっている部分がありますので、納税者である法人間で有利不利が発生し、法人税全体で相殺されるところが多いと思われます。経済界が求めていたのは、国際競争力を高めるための法人税減税だったわけですから、イッテコイではあまり意味がないような気もします。
青色繰越欠損金の控除制限がかけられたのは大きいですね。所得の80%までしか控除できないようにするとのことなので、多額の繰越欠損金があっても納税が生じることがあるわけです。とうとう大銀行も法人税を納めることになるのでしょう。その代わりとばかりに、繰越欠損金の繰越期間が7年から9年に延長されています。
気になるのは、中小企業税制です。繰越欠損金の利用制限を中小企業に適用すると倒産してしまう可能性があると思っていましたが、中小企業(資本金1億円以下)では利用制限をしないこととされています。それにもかかわらず、繰越期間は9年に延長してもらえるそうです。法人税の税率引き下げは中小企業向け軽減税率にも行われますので、全体としては中小企業に有利な改正の方向性のようです。

消費税

最後に消費税に対する改正。
こじんまりと記されていますが、これも増税です。世間一般で話題になっている税率の議論ではありません。将来の税率アップに向けた環境整備を行う!ということのようです。
従来から密かに議論されてきた消費税の益税問題をこの際に極力解消しておきたいということなのでしょう。税率アップになれば益税がより増えてしまうことになるので今のうちに環境整備しておかないと、消費税の税率アップの際に差し障りが出る!ということなのかもしれません。
具体的には、課税期間の課税売上高が5億円超の場合には課税売上割合が95%以上であっても仕入税額控除の全額控除を認めないことにする、とされています。上場会社はもちろんのこと、ある程度の規模の会社では結構大きな問題になると思います。課税売上対応の課税仕入をどのように計算するかということになるので、大規模なシステム対応をしなければならないことも考えられるからです。加えてほぼ間違いなく増税になります。
起業時に特に影響がある免税判定の方法が修正されるとのことです。これまで起業当初2期間、消費税が免税になっていたものが1期間しか免税にできなくなる可能性が出てきました。

最後に

大綱が公表された直後なので細かい説明は省きました。年明け以降、今回の税制改正がどのような影響を及ぼすのか注目していきたいと思います。





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