雇用促進税制
2011年1月12日 | 税金の基礎知識
最新情報『雇用促進計画の提出期限迫る』もご参照ください。
H23年度税制改正大綱に示された雇用促進税制
H23年度税制改正大綱に雇用促進税制というものが以下のように明記されました。
この制度は、一定の要件を満たす法人及び個人は、従業員の採用を新たに行った場合、法人税または所得税から一定の税額を控除することができるというものです。いわゆる税額控除なので、減税効果が高いものといえます。
【国税】
青色申告書を提出する法人で公共職業安定所の長に雇用促進計画の届出を行ったものが、平成 23 年4月1日から平成 26 年3月 31 日までの間に開始する各事業年度において、当該事業年度末の従業員のうち雇用保険一般被保険者の数が前事業年度末に比して 10%以上、かつ、5人以上(中小企業者等については、2人以上)増加したこと等の公共職業安定所の長の確認を受けた場合には、一定の要件の下、当該事業年度の法人税額から、増加した雇用保険一般被保険者の数に20 万円を乗じた金額を控除できる措置を講じます。ただし、当期の法人税額の 10%(中小企業者等については、20%)を限度とします(所得税についても同様とします。)。
【地方税】
公共職業安定所の長に雇用促進計画の届出を行った中小企業者等が、平成 23 年4月1日から平成 26 年3月 31 日までの間に開始する各事業年度において、当該事業年度末の従業員のうち雇用保険一般被保険者の数が前事業年度末に比して 10%以上、かつ、2人以上増加したこと等の公共職業安定所の長の確認を受けた場合には、一定の要件の下、当該事業年度の法人税額から、増加した雇用保険一般被保険者の数に 20 万円を乗じた金額を控除できる措置を法人住民税に適用します。
税制改正大綱だけでは要件が不明確
大綱には「一定の要件下」とされていますが、その内容は明記されていません。3月末までに国会で決定される予定の条文を見ないと正確なところはわかりません。
平成22年12月7日にとりまとめられた雇用促進税制等PTの内容が想定されていると思われますので、整理しておきます。
① 雇用増加要件
その法人のその事業年度末の雇用保険一般被保険者数が、前事業年度末の被保険者数よりも10%以上増加し、かつ、その増加人数が5人以上(中小企業者等は2人以上)であること。
増加率と増加絶対数の2つの条件を満たさなければならないとされているところが特徴的です。当たり前ですが雇用保険に加入していない法人は適用できません。
② 離職事由による要件
『前事業年度及び当該事業年度中に、事業主都合による離職者がいないこと。』
会社都合により従業員数を意図的に減少させておき、直ちに補充要員を採用するといった操作を防止する趣旨とのことです。
③ 支払給与額増加要件
『当該企業の当該事業年度における「支払給与額」が、前事業年度における支払給与額よりも、以下の算式で算定された額以上に増加すること。
給与増加額≧前事業年度の給与額×雇用者増加率×30% 』
たとえば、前期の給与総額が4000万円(10人)、当期の給与総額が4500万円(12人)だとすると、
給与増加額=4500万円-4000万円=500万円
前事業年度の給与額×雇用者増加率×30%=4000万円×2人÷10人×30%=240万円
500万円 ≧ 240万円 ⇒ 条件を満たす
採用を検討する場合には、上記のような要件も一応考慮しておいた方がよいことになってしまうようです。
④ 対象除外業種等の要件
『他の租税特別措置の例にならい、風俗営業等は対象から除外する。』
風俗営業の労働者が増加するのは国として助成しないという考え方です。
税額控除を受けるための手続き
手続き要件を満たしていなければ、上記の要件を満たしていても税額控除を受けることはできません。非常に重要な部分です。やはり上記のPTが基礎になるものと考えられます。
① 企業は、事業年度開始後2ヶ月以内に、目標の雇用増加数等を記載した雇用促進計画(仮称)を作成し、ハローワークに届出る。
② 企業は、当該事業年度終了後2ヶ月以内に、ハローワークにより、雇用促進計画の確認を受ける。
③ 企業が、ハローワークによって確認を受け、交付される雇用促進計画等の書類(租税特別措置法に規定する要件(上記の要件①及び②)を満たしていることについてハローワークの確認書面等)を、税務署に提出する当該事業年度の法人税確定申告書に添付することにより、上記要件①及び②が満たされていることの証明がされたこととする。税務署はこの添付された確認書面等によって、上記要件①及び②が満たされていることを確認する。
非常に面倒な手続きです。
ちょうど前期決算の処理をしている事業年度開始直後に雇用促進計画を作成しハローワークに提出しなければなりません。加えて、事業年度終了後の当期決算処理をしているタイミングにハローワークによる確認を受けなければなりません。
人事部を設置しているような企業であれば上記のような対応はそれほど問題はないと思われますが、中小企業では結構負担が大きいと思われます。
しかも、適用しようとする事業年度の開始直後に計画書を提出しなければならないので書類の作成と提出を失念してしまう可能性もあります。要注意です。
ここでいう「雇用促進計画」という書類がどのようなものかは現段階では不明です。H23年4月1日以降開始事業年度から適用開始を想定していますので、3月決算会社は上記①の要件未充足にならないように細心の注意が必要となりますね。
税額控除額は?
ということで、以上の要件を満たすことができたら税額控除をいくら受けられるのか?ということになります。
上記の「一定の要件」を満たしている法人は、
税額控除額 = 雇用保険一般被保険者の純増人数×20万円
税額控除限度額 = 法人税額の10%(中小企業者等は20%)
とされています。
なお、法人税での税額控除後の税額に法人税割の税率を適用することによって、間接的に法人住民税も減税することが予定されているようです。
中小企業の場合、限度額の定めはありますが、国税と地方税合計で約48万円/2人(20万円×(1+20.7%)×2人)の税額控除が受けられるというのはかなり大きな減税です。
本年4月前後に採用を検討している会社さんは、3月に採用するのと4月に採用するのとでは大きな差になってしまう可能性がありますのでご注意ください。
ただ、社員採用は固定費の増加となり、雇用を継続する限り負担がのしかかります。くれぐれも税金対策と人員計画をごっちゃに考えないようにしてくださいね。
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