コラム

繰越欠損金控除制度に関する税制改正

2011年1月19日 | 税金の基礎知識

青色繰越欠損金について2つの改正

平成23年度税制改正に青色繰越欠損金に関するものが含まれています。

欠損金の控除限度額の設定(不利改正)

中小法人等を除き、控除限度額をその事業年度の繰越控除前の所得の80%に制限するとされています。
これまでこのような控除制限がありませんでしたので、繰越欠損金が1000あって当期に800の繰越控除前所得があったならば課税対象の所得はゼロ(800-800)でしたが、改正後は160(800-800×80%)が課税所得とされることになるわけです。

繰越期間の延長(有利改正)

これまで、欠損金の繰越期間は発生年度の翌年度から7年間と定められてきましたが、改正後は9年間に延長されることとされています。
欠損金の控除限度額を設定することで繰越期間内に控除しきれない可能性が発生するため、繰越可能期間を2年延長することでバーターしたものと思われます。

中小法人にとっては有利改正のみ

上記の改正点のうち、欠損金の控除限度額を80%に設定するのは、中小法人等を除く法人とされています。

中小法人とは、普通法人のうち事業年度終了のときにおける資本金が1億円以下の法人を言います。資本金を基準としますので、資本準備金等は関係ありません。

要するに、資本金1億円以下の会社は、繰越欠損金が1000あって当期に800の繰越控除前所得があったならば課税対象の所得はゼロ(800-800)という従来の取り扱いのままということになります。

これに対して、繰越期間の延長は中小法人等を除く会社とされていませんので、当然に中小法人についても適用されます。

結果的に、中小法人に関しては、繰越期間が2年延長されるという有利改正のみが行われることになります。

適用関係

欠損金の控除限度額制限

この改正は平成23年4月1日以降開始事業年度の法人から適用することが予定されています。すなわち、平成23年4月1日以降開始事業年度に発生する繰越欠損金はもちろん、平成23年3月31日以前終了事業年度に発生した欠損金についても制限されることになります。要するに平成23年4月1日以降開始事業年度の欠損金控除前所得から欠損金を控除する場合には適用されることになるわけです。

繰越期間の延長

この改正は上記とは異なり、平成20年4月1日以後開始事業年度にかかる欠損金に遡及して適用されることとされています。

帳簿書類保存要件

繰越期間が延長されることに伴い、将来控除することを予定している欠損金については、その発生事業年度の帳簿書類を保存していることが要件とされています。欠損金の繰越期間が延長される平成20年4月1日以後開始事業年度からは書類の保存期間が9年になるということなので注意が必要です。

多額の欠損金を抱えている会社は要注意

中小法人に関しては、単純に有利改正のみなので問題ないのですが、資本金が1億円超の会社が多額の繰越欠損金を有している場合で、今後多額の所得発生が予定されているときは注意が必要です。

たとえば、含み益のある不動産や有価証券を売却して債務圧縮を検討している場合、含み益を実現させた際に売却益について法人税が課税されてしまう可能性があります。あるいは、第三者資本を導入して事業立ち上げのために多額の先行投資を行ってきたが、ようやく利益体質に転換したという場合も同様に法人税が課税されてしまう可能性があるのです。

欠損金が生じているということは、過去に社外に資金が流出してしまったということを意味しています。十分な内部留保がある会社は別として資本に欠損が生じた状態で社外流失を伴う法人税課税が行われるのは非常に大きな負担となることが考えられます。

会社によって事情は異なるとは思いますが、資本金を1億円以下に減資すべきかもしれません。減資によって過去に生じた欠損を填補したり、資本金を資本剰余金に振り返る手続きを行うことで、上記のような不利改正を回避することが可能となります。同時に、外形標準課税の負担も軽減(免除)されることになります。

減資は債権者保護手続きとして公告を行い、債権者異議申し立て期間を経過しなければ効力を発生させることができません。
平成23年3月期は従来通り100%の控除が認められますので、株主とよく協議して減資を検討しておくべきかもしれませんね。





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