コラム

役員退職金に関する税制改正

2011年1月26日 | 税金の基礎知識

役員退職金の1/2課税の廃止

平成23年度税制改正で役員等退職金に対する所得税の計算方法が改正されようとしています。

原則として、退職所得の計算は従来どおり以下の方法で計算するが、

退職所得 = ( 退職金 - 退職所得控除 )×1/2

勤続期間が5年以下の役員等の退職所得の計算では1/2部分を廃止し、

退職所得 = ( 退職金 - 退職所得控除 )

とする、というのです。

役員等の範囲

税制改正大綱に突然「役員等」の定義が示されました。

大綱では、

  1. 法人税法第2条第15号に規定する役員
  2. 国会議員及び地方議会議員
  3. 国家公務員
  4. 地方公務員

を「役員等」だと示しています。

議員や一定の公務員が唐突に対象としているところが特徴ですね。
これは、いわゆる「天下り」や「渡り」については、退職金課税制度の恩典を与えないということのようです。これらは従来から社会問題だとして散々報道されてきたもので、これを税制によって縛りをかけようということなのですね。

法人役員にまで波及

公務員(いわゆる官僚)や議員の「天下り」や「渡り」を税制から牽制するというのはわかりますが、一般法人(会社)の役員まで規制をしようというのです。

確かに、同族会社では、家族を役員にしておいて、毎月の役員報酬を支給すると同時に、多額の法人所得が発生する見込みの年度に「退職」させることで法人税を圧縮。役員退職金については1/2課税の優遇税制があるので税金負担が減る、といった節税!?を行っている会社が多数ありますので、これを封じようということな訳です。

たとえば死亡退職金だった場合どうするの?

中小企業では、前記のような節税!?が行われており、それが問題だとしても、たとえば役員が在任期間中に交通事故で死亡してしまった場合はどうなるのでしょうか。
計画的に税金を圧縮することを規制したいという当局の考えはわからなくありません。しかし、不慮の事故で死亡してしまった場合の退職金に恣意性が認められない場合も多数あると思います。

現段階では税制改正大綱(このように税制改正したい)のレベルなので詳細はわかりませんが、個々の事情を配慮した改正にしてもらいたいものです。

5年以内の退任は要注意

役員の退任を予定している会社は日本中にいくつもあると思います。
法人税側の条件を備えていれば、法人税の計算では退職金を損金処理することはできるわけですが、所得税はタイミングによって思わぬ負担になることもあり得ます。
今回の改正は、平成24年1月1日以降の退職金についての改正ですから、微妙なタイミングでの退任を予定している場合には慎重に確認の上実務を行う必要がありますね。





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