税理士は会社登記をできるのか?
2012年4月6日 | 起業支援
会社設立後に税務顧問契約を締結するのであれば、会社の設立業務(法人設立登記)を無料もしくは廉価で引き受けます!という会計事務所が多数検索できます。
新規顧問先獲得のために、『法人設立パック』という企画を打ち出す税理士が多くなりました。税理士業界の競争はここまで来たようです(汗)
ところが、毎日新聞2012年3月28日地方版に「司法書士法違反:容疑の元税理士逮捕 元勤務先も書類送検 /神奈川」という記事が掲載されました。
税理士は会社登記できないの?という疑問がわきます。
実は、税理士は税理士の名をもって、会社登記業務を行うことはできません。
登記業務は司法書士の独占業務と法律で定められています。
国家資格というのは難しいもので、それぞれに独占的に行える業務範囲が法律で定められています。違反すると最悪の場合、逮捕!となってしまうのです。
この元税理士さんは、税理士として登記申請を行ったわけではないはずです。そもそも法務局が受け付けてくれませんからね。登記申請のために必要な書類の作成を行って、あくまでも申請者本人が法務局に申請した形式をとっているのでしょう。
厳密にはこうした仮装本人申請も行ってはいけないこととされているため、逮捕されてしまったのです。
司法書士と類似した資格と見られがちなものに行政書士があります。
かつて、「会社設立」や「起業」といったキーワードを検索すると、行政書士のHPがものすごい数表示されました。司法書士法では、行政書士も会社設立登記を行ってはいけないことになっています。司法書士業界からすると行政書士が司法書士の職域を荒らしたということになってしまったようです。その結果、司法書士会と行政書士会が話し合い、行政書士がそのような広告を行うことはしないように行政書士会が会員を管理する、ということで決着したそうです。
近い将来、税理士会と司法書士会の話し合いが行われることになるのかもしれません。
結論は行政書士と同様のことになるのでしょうね。
うちの無料相談でも、
設立手続きはやってもらえないのでしょうか?
他社さんでは、無料で行っているところがたくさんありますが。
というリクエストを受けることが増えています。
当事務所は、『会社設立パック』という企画は行っていませんので、丁寧に説明してご理解いただいています。代わりに信頼のできる司法書士さんをご紹介しています。
相談者の立場からすれば、設立費用が別途かかるわけですから、うれしい話ではないと思います。しかし、僕が法律違反をしているようでは話になりませんからね。
「あらゆる領収書は経費で落とせる」のか?
2012年4月4日 | 読書
なかなか刺激的なタイトルの本です。
目次の一番最初に「コンビに弁当から愛人手当まで経費で落とせる」とあります。
実に刺激的です。
顧問先の社長や無料相談での相談者の方から質問を受けたらどうしよう!?
知らないことでも書いてあったらマズイ!!
という訳で購入してみました。
間違えではないけど、やるなら(大)ヤケドの覚悟が必要かも??
ご本人も最後の方で書かれています。
この本に書かれていることは税法上の話であって、一緒に働いている同族関係者(特に奥様)が愛人手当を支給することをOKとするかは別問題という前提でのお話です。
現実感がなくてがっくりする社長さんがたくさんおられるのではないでしょうか(笑)
税の世界では、「事業に必要なものか否か」という視点は非常に大切です。
拾ってきた領収書、もらってきた領収書を経費処理すればOK!!なんてことはありません。これらの架空経費に「事業との関連性」を形式的に当てはめれば損金算入可能!ということを著者はどこにも書いていません。それはただの脱税です。
自宅のテレビも簡単に経費処理できる!?とお考えの方が出るかもしれませんが、そう簡単な問題ではありません。国税調査官OBが大丈夫だと言っているんだから安心!というテクニック集では必ずしもありません。
議論の余地はあるかもしれないという程度のものです。しかも、本書で紹介された「口上」を崩すために、調査官から、あんな質問、こんな質問が次から次へと投げられるかもしれません。これを全部打ち返したらOKになるというテーマも含まれています。
「事業との関連性」について説明したら、それ以上追及されることはない、と考えるのは誤りです。鵜呑みにされる方は、いらっしゃらないと思いますけど、念のため。
税務調査官が敢えて説明を求める経費が多ければ多いほど、キワドイことをしているということでもある訳です。本書には書かれていませんでしたが、「社会通念上」のやりすぎ!を繰り返すと頻繁に税務調査を受けることにもなりかねませんから注意したいものです。
ちなみに、知らないことが書かれていなくて一安心しました。ハイ(笑)
「国税記者 実録マルサの世界」
2012年3月21日 | 中小企業と経営 / 税金の基礎知識 / 読書
この本を手にとる人は、税理士業務に関係している人か、無理な税金対策を行っている経営者がほとんどではないでしょうか。国税局査察部とは全く無縁!という人はそもそも興味を持たないでしょう。
20年来の不景気で脱税事件として摘発される規模は年々小さくなってきています。増差所得で1億円超がひとつの目安と言われており、この本の中でもそのように解説されています。
増差所得1億円なんて自分には関係ない!とお考えの方、意外とそうでもないかもしれません。なぜなら、ここでの増差所得は3年間の累計だからです。悪質な所得隠しの場合には7年間遡及して国税当局は更正できますからもっと範囲は広がります。査察部が実際に刑事告発できるのは、告発のための証拠固めの時間を考慮すると3年なのだそうです。調査対象は5年~7年ということになるのでしょう。単純計算すると年3,300万円以上の所得漏れがあると告発レベルになってしまうようです。期ズレは度外視して考えてのことですけどね。
脱税の手口は、売上を隠す方法(売上除外)、不正な経費を計上する方法(架空経費の計上)、その組み合わせの3パターンに分類されると記述されています。確かにその通りです。
なぜ、こんな所得隠しを行ってしまうのか?
著者は、急激な売上増加の発生で、想像以上の法人税の課税が予想されるとついもったいなくなって(汗)やってしまうパターンが多いと解説しています。景気がいいのは今だけかもしれない、落ち込んだときの資金を確保しておかないと大変なことになってしまうのだから備えておかないと。。。といった心理状態に、経営者は陥ることがあるということなのでしょう。
実際には、これぐらいみんなやっている、大した金額ではないから大丈夫だろう!から始まってどんどん加速してしまった、あるいは、今やめたら過去の処理が疑われるからまずい!という心理パターンもあるかもしれません。
本書は、国税局付きの記者という立場から取材した脱税事件について解説が行われています。国税職員には2重の守秘義務が課されているので絶対に調査情報を漏らさない!!と何箇所にも記載されているのですが、国税局職員から情報を入手した!という部分もあって違和感がありました。実際には多少漏れてしまっているのでしょうかね。手口が詳述されていますが、基本的に地検特捜部が告発した事件を取り上げていますから、裁判上の情報に依拠しているのかもしれません。
くれぐれも手口をマネしないことです。
査察部とまでは行かないまでも、所轄税務署でも管轄内の法人をよく分析しているものです。もちろん、料調(リョウチョウ)も監視しているでしょうから、良からぬことは考えない方がよいです。
ちょっと検索してみれば、脱漏所得金額の年平均額が2,000万円から3,000万円ぐらいのものが意外と多いことがわかります。
