コラム

信用保証料率割引制度の見直し

2011年3月17日 | 中小企業と経営 / 資金調達と決算書

平成23年4月1日から見直し

平成18年4月より信用保証料率割引制度というものがスタートしています。
これは、信用保証協会付き融資を申し込む際に、公認会計士や税理士などが、同協会に提出する決算書類が、「中小企業の会計に関する指針」に準拠しているかを『チェックリスト』により確認を行った場合、信用保証料率が0.1%割引されるという制度です。

この制度の運用が本年4月1日(平成23年4月1日以降に終了する事業年度の計算書類)から見直されることになりました。

もともとこの制度は「中小企業の会計に関する指針」の普及定着により中小企業金融の円滑化を目的として導入されたものです。制度開始後から5年を経過し、一定の成果が認められるとの判断のもと、よりいっそうの基準への準拠を図ろうとの趣旨により見直しを行うとのことです。

見直し内容

『チェックリスト』は日税連、日本公認会計士協会、日本商工会議所及び企業会計基準委員会の4団体が作成したもので、全部で58項目から構成されています。信用保証料率割引制度の適用上では、このうち信用保証協会が15項目を抽出し、その準拠状況の確認を税理士等が行い、一定の準拠が確認された場合に保証料率の割引が認められてきました。

この制度の運用で以下のような見直しが行われるとのことです。

  1. 『チェックリスト』の全部準拠
  2. 従来、15項目のうち1項目以上の準拠が認められた場合に割引制度が適用されてきました。
    これを15項目全部が準拠している場合にのみ割引制度を適用することに変更されます。かなり厳しくなります。

  3. 保証協会の判断で不適用とすることができる
  4. 『チェックリスト』で税理士等が15項目の全部準拠を記載していたとしても、故意・過失を問わず事実と異なる記載がなされていると保証協会が判断した場合には、割引制度適用を拒否することができることとされます。

  5. 税理士等の一時利用停止処分
  6. 故意・過失を問わず事実と異なる『チェックリスト』を同一の税理士等が複数回作成し、割引制度の適用を行おうとした場合で、保証協会が計算書類の信頼性向上に寄与しないと判断したとき、保証協会は当該税理士等の作成した『チェックリスト』について1年間割引制度の適用対象としないことができる。

    この場合、保証協会は一時利用停止措置とした税理士等に文書でその旨を通知し、所属税理士会にその写しを送付する。

  7. 税理士等のブラックリスト化
  8. 上記の通知は各信用保証協会から全国信用保証協会連合会に対しても行い、全信用保証協会で情報共有を行う。必要に応じて中小企業庁に連絡を行う。

全部準拠が求められる15項目

全部準拠が求められる15項目は以下の通りです。
かなり厳しい運用に変更されますので、中小企業の経営者の皆さんは自社に影響があるか否かをよくご確認ください。

勘定科目 指針の内容の確認事項
金銭債権(貸倒損失・貸倒引当金) 法的に消滅した債権又は回収不能な債権がある場合、これらについて貸倒損失を計上し債権金額から控除したか。
取立不能のおそれがある金銭債権がある場合、その取立不能見込額を貸倒引当金として計上したか。
有価証券 売買目的有価証券がある場合、時価を貸借対照表価額とし、評価差額は営業外損益としたか。
時価が取得価額より著しく下落し、かつ、回復の見込みがない市場価格のある有価証券(売買目的有価証券を除く。)を保有する場合、これを時価で評価し、評価差額は特別損失に計上したか。
その発行会社の財政状態が著しく悪化した市場性のない株式を保有する場合、これについて相当の減額をし、評価差額は当期の損失として処理したか。
棚卸資産 棚卸資産の期末における時価が帳簿価額より下落し、かつ、金額的重要性がある場合には、時価をもって貸借対照表価額としたか。
経過勘定 前払費用と前払金、前受収益と前受金、未払費用と未払金、未収収益と未収金は、それぞれ区別し、適正に処理したか。
固定資産 減価償却は経営状況により任意に行うことなく、継続して規則的な償却を行ったか。
予測することができない減損が生じた固定資産がある場合、相当の減額をしたか。
引当金 将来発生する可能性の高い費用又は損失が特定され、発生原因が当期以前にあり、かつ、設定金額を合理的に見積もることができるものがある場合、これを引当金として計上したか。
退職給付債務 確定給付型退職給付制度(退職一時金制度、厚生年金基金、適格退職年金及び確定給付企業年金)を採用している場合は、退職給付引当金を計上したか。
中小企業退職金共済制度、特定退職金共済制度及び確定拠出型年金制度を採用している場合は、毎期の掛金を費用処理したか。
収益・費用の計上 収益及び費用については、一会計期間に帰属するすべての収益とこれに対応するすべての費用を計上したか。
原則として、収益については実現主義により、費用については発生主義により認識したか。
上記以外の「中小企業の会計に関する指針」の項目について適用状況を確認し、「中小企業の会計に関する指針」に拠って表示(注記を含む)を行ったか。

negau.orgプロジェクト

2011年3月17日 | 時事

東北・関東大震災被災者支援プロジェクト
http://negau.org/

が立ち上がりました。

■negau.orgでできること

Twitter上にある被災者や被災地に関する沢山の情報をTwitterを知らない方でも携帯電話やスマートフォンで、エリアごとに確認することができます。
(Twitter側に各地の情報がある場合に限ります)

まずはトップページから情報を探している都道府県、続いて表示された市区町村を選択して下さい。それによって各地の情報が表示されます。

■皆さんへのお願い

少しでも現地に情報を届けるために、被災地の皆さんの”携帯電話”にこのホームページのURLを送ってあげてください。

negau.orgに直接アクセスしてみて下さい。

このように民間企業にもできることがあります。

それぞれがそれぞれにできることをひとつづつ進めて行きましょう!

計画停電と休業手当

2011年3月16日 | 時事

現在、計画停電が断続的に実施されています。
製造業において計画停電は重大な問題になっていることと思います。

はい、今日は何時から停電にするかもしれません!

なんていわれても、サービス業のようなわけにはいきません。
設備の立ち上げが瞬間で行えるものから長時間かけて立ち上げるものもあれば、稼動停止までにある程度のまとまった時間を要するものもあるからです。結局、3時間の停電であったとしても、前後の運転時間のリードタイムを含めると4-5時間も要してしまう場合もありえるからです。また、前後工程のリレーションのアイドルタイムの問題も多々あることでしょう。

こうしたときに問題になるのが、労働基準法第26条の『休業手当』の取り扱いです。

労基法26条では、

使用者の責めに帰すべき事由による休業の場合においては、使用者は、休業期間中当該労働者に、その平均賃金の100分の60以上の手当てを支払わなければならない。

と定められています。

ここで、今回の計画停電が『使用者の責めに帰すべき事由』に該当すか否かが実務上問題になっていました。

これに対し、厚生労働省から通達が緊急で発信されました。

計画停電に関連して休業を検討される場合には、以下の通達要件を十分に立証できるような体制を検討されるべきでしょう。この問題は非常にナイーブな問題であり、個々の企業の実態に影響を受ける問題だと思いますので、顧問社会保険労務士等と十分に協議の上実施されるべきかと思います。

基 監 発0 3 1 5第 1号
平 成 2 3 年 3 月 1 5日
都道府県労働局労働基準部監督課長 殿
厚生労働省労働基準局監督課長

計画停電が実施される場合の労働基準法第26条の取扱いについて
休電による休業の場合の労働基準法(昭和22年法律第49号。以下「法」という。)第26条の取扱いについては、「電力不足に伴う労働基準法の運用について」(昭和26年10月11日付け基発第696号。以下「局長通達」という。)の第1の1において示されているところである。
今般、平成23年東北地方太平洋沖地震により電力会社の電力供給設備に大きな被害が出ていること等から、不測の大規模停電を防止するため、電力会社において地域ごとの計画停電が行われている。この場合における局長通達の取扱いは下記のとおりであるので、了知されたい。

1 計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として法第26条の使用者の責めに帰すべき事由による休業には該当しないこと。
計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当すること。ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業には該当しないこと。
3 計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記1及び2に基づき判断すること。

(参考)
基 発 第 6 9 6 号
昭和26年10月11日
都道府県労働基準局長 殿
労働省労働基準局長
電力不足に伴う労働基準法の運用について
最近電力事情の悪化は、全国的問題となり、各方面に深刻な影響を与えつつあるのであるが、労働基準法の適用についても、幾多の困難な問題が生じている。然して、電力問題は、根本的には、電力の確保増強と、その需給調整により左右されるところが大きいことに鑑み、本省においては、公益事業委員会宛別紙の通り申入れを行い電力の確保と需給調整の合理化と計画化について要望したのであるが、貴局においても電力事情の実態を不断に把握し、左記要領により行政運営上万全の措置を講ぜられたい。
第1 労働基準法の運用について
1 法第26条関係
休電による休業については、原則として法第26条の使用者の責に帰すべき事由による休業に該当しないから休業手当を支払わなくとも法第26条違反とはならない。なお、休電があっても、必ずしも作業を休止する必要のないような作業部門例えば作業現場と直接関係のない事務労働部門の如きについてまで作業を休止することはこの限りでないのであるが、現場が休業することによつて、事務労働部門の労働者のみを就業せしめることが企業の経営上著しく不適当と認められるような場合に事務労働部門について作業を休止せしめた場合休業手当を支払わなくても法第26条違反とはならない。
2 以下略

http://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/other/dl/110316a.pdf




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