クレジットカードでも領収書を必ずもらう
2012年6月11日 | 税金の基礎知識
カード精算書では不十分
カード会社が発行するクレジット利用明細を経費の根拠書類としていませんか?
クレジットカード利用明細には、いつ、どこの店で、いくら使ったかが一覧記載されています。経費精算には便利なのでこれを利用している方もおられるのではないかと思います。
要するにカード精算書を領収書の代わりにしているということですね。
さて、便利に思われるカード精算書は本当に領収書(請求書)の代わりになるのでしょうか?
国税庁のHPでは領収書の代わりにはならないと書いてあります
カード会社からの請求明細書(国税庁HP)
【照会要旨】
法人カードを利用している場合には、カード会社から一定期間ごとに請求明細書が交付されますが、この請求明細書は消費税法第30条第9項《仕入税額控除に係る請求書等の記載事項》に規定する請求書等に該当するのでしょうか。
【回答要旨】
クレジットカード会社がそのカードの利用者に交付する請求明細書等は、そのカード利用者である事業者に対して課税資産の譲渡等を行った他の事業者が作成・交付した書類ではありませんから、消費税法第30条第9項に規定する請求書等には該当しません。(以下省略)
そこで、消費税法30条は何か書かれているかというと、
消費税法第30条
9 第7項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類をいう、
一 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する請求書、納品書その他これらに類する書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 書類の作成者の氏名又は名称
ロ 課税資産の譲渡等を行った年月日(課税期間の範囲内で一定の期間内に行った課税資産の譲渡等につきまとめて当該書類を作成する場合には、当該一定の期間)
ハ 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容
ニ 課税資産の譲渡等の対価の額(当該課税資産の譲渡等に係る消費税額及び地方消費税額に相当する額がある場合には、当該相当する額を含む。)
ホ 書類の交付を受ける当該事業者の氏名又は名称
消費税法30条9項の要件を満たす書類を保存していないと、その取引について仕入税額控除を適用できないことになるわけです。上記国税庁HPのQ&Aは消費税法の話で法人税法についての話ではありません。
カード会社から発行される明細書は、
- 利用したお店が発行したものではない
- カード利用の内容が明記されていない
という点で要件不足という訳です。
超形式的な対応で、がっくりさせられますけど、法律に書いてあるのでそうするしかないようです。
結局、消費税の仕入控除の対象とするには、カード精算書ではなく、お店の領収書もしくは店舗で交付されるカード利用明細を保管しておかなければならないことになります。
税務調査でこんな細かいところまでチェックされないかもしれませんが、指摘される可能瀬もあるのでご注意ください。
上記の点は、消費税の免税事業者や簡易課税を選択している会社には関係ありませんので誤解のないよう。
法人税法の方も気になりますが、法人税法には書類の発行要件のようなものまで記載されていないようです。
以前税務調査で、カード精算書は領収書に該当しないから損金算入は認められない!と指摘されたこともありました。そのときは何とか収まりましたけど、店舗が発行した領収書もしくはカード利用明細を会社保管しておいた方がよいでしょうね。
役員給与と役員賞与の統計データがネットで見れる
2012年6月6日 | 中小企業と経営
役員給与や役員賞与の平均額を知ることができる
税務研究会が発行している週刊税務通信に興味深い記事がありました。
「他社の支給額はコレだ!(No.3214)」という記事です。
この記事によれば、平成22年度の役員給与平均額は約4,635,156円、役員賞与の平均額は約96,698円とのこと。
このデータは、財務省・財務総合政策研究所が調査した「法人企業統計年報」によるものとのことです。
おもしろいおもしろい。
ということで、ネットで探してみるとありました!
http://www.mof.go.jp/pri/publication/zaikin_geppo/hyou/g714/714.htm
公表されているデータを開いてみても税務通信に掲載されているデータが見つかりません。
???
よく見てみると下の方に付加価値額というデータがあります。
そして、そのさらに下に役員数と従業員数が掲載されているではありませんか。
このデータに基づいて独自に計算したもののようです。
税務研究会が費用をかけて算定したものなので、ここに掲載することはいたしません。税務通信平成24年5月28日号をご覧頂くのがよろしいかと思います。
なお、「法人企業統計年報」には、役員給与や役員賞与に限らず、色々な財務データが豊富に掲載されています。しかもEXCELデータで公表されているので加工も簡単です。
業種区分が例によってお役所の区分ですからメッシュが粗すぎるともいえますが、貴重な情報元であることは事実ですね。
しかも、会社の規模別にデータが整理されているのもありがたいものです。
町の税理士の感覚としては、記事に掲載されている役員報酬額が低いようにも感じますけど、平均するとこうなってしまうのでしょうかね。
『高田直芳の実践会計講座 「戦略会計」入門』
高田先生の本のご紹介です。
前回の『「管理会計」入門』に軽いショックを受け興味を持ったのがきっかけでした。
どうやら本格的に「ありそうでなかった」高田ワールドの扉を開いてしまったようです。
高田先生の著書のタイトルは、「どこにでもありそう」な「管理会計」「戦略会計」ですが
中身は従来の理論教本とは全く違うのです。
本書は、経済学の理論を本気で実務に応用しようとしています。
この、高田先生の「本気」は今までありそうでなかったものでした。
というのも、従来、経済学と会計学は別物として議論されてきたと思います。
しかし、高田ワールドでは、
経済学⇒会計学
会計学⇒経済学
というように、相互検証を行い両者の同一性を検討しています。
市場の動静を経済学的に整理し、各段階で検討すべき経営戦略の方向性を示す。的確な経営情報を収集・活用するための道具として管理会計(戦略会計)を位置づけています。
これを踏まえて経済学の会計学への応用可能性、さらには経営学への応用可能性を検討しているのです。全く新しい試みだと思います。
経済学の均衡理論や独占的競争市場において発生する現象を実際の企業経営にどのように応用するか。企業のおかれたポジションを分析することで、どのような経営戦略を選択すべきなのかなどが検討されています。
ただ、ミクロ経済学では、情報の完全性があるものとして理論化されているわけですが、実社会はそうはいきません。市場規模にしても、市場の成熟度にしても客観的確実な数値を手にすることは困難です。
実務化するためには企業ごとに何らかの仮説を想定し、検証していく作業が不可欠となります。万が一ミスマッチした場合、経営の失敗につながる予感もします。しかし、情報が不完全な実社会であっても、こうした試行錯誤を繰り返す努力をしている企業と直感に頼った経営をしている企業とではいずれ大きな差となって現れることでしょう。
本書を読解するには、会計の基礎知識とCVP分析に関する基礎知識に加え、ミクロ経済学の知識がある程度必要かもしれません。
本書で展開される理論は公認会計士試験の試験科目でほぼ網羅されるものなので、自分としては懐かしい知識ともいえました。しかし、実務で経済学を使うことはあまりないように思いますから、とっつきにくい方もおられるかもしれません。受験レベルで理解する必要があるものではありませんから、気楽に読む姿勢でよいと思います。
著者の高田先生とは何者よ?と思って調べてみると、公認会計士試験の試験委員をされているのですね。受験生にとってはきついかもしれませんね。でも、実務では役に立つ知識が満載ともいえますから頑張ってもらいたいです。