1999年の東証マザーズの開設は株式上場市場に大きな変化をもたらしました。
従来の新興市場の上場ハードルが劇的に引き下げられたからです。上場条件としての売上規模も利益規模も大幅に引き下げられることになりました。
しかし、この波に乗るかのように、上場は果たしたものの、売上実績も十分に無いまま、目新しいビジネスモデルや企画書的な事業計画で上場した会社の中には、上場後に急速に経営破綻した会社もたくさんあります。
新興市場は、確かに、小規模でも可能性があるベンチャービジネスに資金調達と成長への道を開きました。しかし、未成熟過ぎるビジネスが通用するほど甘くはありません。
かつて、大公開時代と言われた当時、上場会社の基礎条件として膨大な審査資料の作成と管理組織の構築が強く求められました。多少は緩和されたものの、今でもこのことに変わりはありません。
確かに、管理組織が未成熟なベンチャービジネスにとって膨大な審査資料の作成と管理組織構築を短期間に達成することは困難なことでした。それで多くの上場マニュアル本や上場コンサルタントが登場し、上場のための体裁や形式を整えるビジネスが世間から注目されました。
しかし、当然のことですが、営業実態が成熟できていない状態で上場の体裁や形式を整えるだけでは、上場はできません。
近年は特に、その会社の『利益源泉はどこにあるのか?』という最も基本的な実体の部分が重点的に審査されるようになってきています。会社に利益を継続的に出せる仕組みが備わっていることが株式上場の絶対条件となっているということです。
上場を目指すベンチャービジネスには、企業規模や資金力こそ小さくても、
- 確たる技術
- 確たる営業推進力
が必要です。
この2点がしっかりと組み合わされたとき、小さなシードだったビジネスが活力あるビジネスに発展していくものです。この2点を踏まえてはじめて会社の上場を目指す意味があり、ベンチャーキャピタルの投資を受けたり、管理系統人員に上場経験者を採用することも意味を持ちます。
上場を目指すのに必要なことは、土台がしっかりとしたビジネスを立ち上げることに尽きます。しっかりとしたビジネスを立ち上げるためには、技術のプロと営業のプロを中心に組織を編制する必要があります。管理系強化はビジネスの基礎ができあがり始めてからでも遅くはありません。
株式上場することで、会社は証券市場の不特定多数の投資家から資金を調達できるようになり、より多くの資金をビジネスに投資することができるようになります。
その代わり経営者は、資金調達した結果の利益を投資家にお返しする責任を背負います。しかし、経営者は、証券市場からの資金調達のメリットに目が行くものの、その責任の重さの方は意外と自覚できていないことも多いのではないでしょうか?
上場後は公表利益達成のためのプレッシャーを想像以上に背負うことになることでしょう。また、開かれた市場であるが故に、怪しげな投資家が近づいてくる可能性もあります。
マニュアル通りの管理だけではこうした圧力を乗越えていくことはできないかもしれません。上場を志すからこそ、上場と上場による利益を目的化してはなりません。むしろ、投資家に経営をガラス張りにする責任を重く受け止め、これまで以上に地道に正しい経営をストイックに遂行する覚悟をしなければなりません。
結局は、上場は会社の成長のための手段であり、一つの通過点に過ぎません。
株式上場しようがしまいが、経営者というものは、利益確保のために、組織の継続のために、ビジネスチャンスの発掘とその市場獲得のための組織編制を継続的に行うしかないのだと思います。
- お客様のために自社がなすべきことをなす
- 自社ができるお客様のニーズを創造する
会社がなすべきことは、上場会社も非上場会社も決して変わるものではありません。創業の志を次の世代に引き継げるように会社の基礎作りを本気で行うことに尽きます。
営業と技術の強化が上場準備のために必要と申し上げました。管理強化はその次とも申し上げました。しかし、管理制度の整備という本格的な上場準備のために、財務責任者を登用するまで管理制度は置き去りでよいと言うことではありません。
上場準備において、過年度決算を遡及して大幅修正しなければならない局面は意外に多いものです。上場準備の過程では、税務的に正しくても会計的には望ましくないと判断されることがあります。
このような事態を予防するためにも会計的視点からも決算を検証しておく意味があると思います。私たちは税務顧問の立場から監査法人との協議調整も行ってきましたので、税務的視点と会計的視点から決算をよりよくとりまとめられるようサポートすることができます。ご興味のある方は気軽にお問い合わせください。