コラム

確定申告していれば外注に対する源泉徴収はいらないのか

2010年4月21日 | 税金の基礎知識 / 起業支援

個人で事業を行っている外注先への支払に源泉徴収は必要なのか、必要ではないのか。しばしばトラブルになる問題です。
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給与所得と源泉徴収制度

2010年4月7日 | 税金の基礎知識 / 起業支援

起業するまでは、年末調整で所得税の申告納税が完了していた方も多いと思います。経営する立場になると従業員に代わって会社が税務処理を行わなければなりません。起業を志す経営者は源泉徴収制度を理解していなければなりませんね。
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個人事業は得なのか損なのか

2010年3月10日 | 税金の基礎知識 / 起業支援

起業にあたって個人事業として開始すべきなのか、最初から会社として行うべきなのか?
あとから法人化を考える場合、どのタイミングで考えるのがよいのかを整理してみました。

起業自体は会社でも個人事業でもできる

法律上、起業は個人事業としてでも法人事業としてでも行うことができます。起業を志す人からすればどっちの方が有利なのか!?というところが気になるはずですよね。

  • 税金面で有利不利はないのか
  • 消費税が安くなると聞いたことがある
  • 個人事業で大手の会社は取引してくれるのか
  • 個人事業だと交際費を使いたい放題らしい
  • 個人事業だと青色申告にすると税金が安くなるらしい
  • 個人事業だと社会保険が安くなるらしい etc
  • インターネットにはこうした情報が氾濫しています。
    さてさて、実際はどうなんでしょうか。

    税率では会社の方が有利

    法人税の税率は一定率であるのに対して、所得税の税率は累進税率になっていることはご存知かと思います。
    個人事業で起業するということは、所得税のみを払うことになります。所得税の最低税率は10%(住民税を加えると20%)です。法人税の税率は軽減税率を考慮しても約25%なので、起業直後の規模が小さい段階では個人事業の方が税率的に有利になるだろうと多くの方が考えています。
    実際にどうかをシミュレーションしてみましょう。
    いくつかの条件付けが必要なのですが、ここでは次のような前提での計算となっています。

  • 会社の資本金は1億円以下(軽減税率が適用できる)
  • 交際費等の税務調整項目はない
  • 個人事業は青色申告である(青色申告特別控除の適用がある)
  • 会社は社会保険(協会健保及び厚生年金保険)に加入し、個人事業では国民健康保険(他に世帯収入はない)と国民年金(2名)に加入する
  • 個人には当該事業以外からの所得はない
  • 社会保険料控除と扶養控除・基礎控除以外の所得控除はない
  • 事業所得としての所得税と法人税を比較してみると利益水準によって有利不利が反転しています。ここでの法人税の税率は、役員報酬をゼロにして事業利益に対する税金を全額法人税として支払った場合に法人税の負担税率はどのようになるかを計算しています。この結果、両者の分岐点の利益は2850万円ということになりました。

    ここで、前提を加えて、会社の利益を全額役員報酬として支払ってしまうことにすると、事業所得としての所得税と給与所得としての所得税の有利不利の話に置き換えることができます。
    この場合、常に給与所得の方が有利になることがわかります。

    同じ所得税であるのになぜこのようなことになってしまうのか!?

    原因は、事業所得について認められる青色申告特別控除と給与所得に認められる給与所得控除の構造によるものなのです。

    青色申告特別控除は65万円の固定額なのに対し、給与所得控除は収入額に連動して増加していきます。しかも、現行税法では給与所得控除に上限がありません。

    小規模な会社では多くの場合、社長が自らの役員報酬を決定できます。こうした現実を考えると事業所得と給与所得のいずれが税率的に有利なのかという話に置き換わってしまうわけです。

    会社の利益を事前に予測できて、これを全額役員報酬に設定することができるという条件がもし現実に成立するなら、個人事業として起業するよりも法人として起業した方が税率的に有利にすることができるということになるのです。
    こうした不平等を解消する目的で特殊支配同族会社の役員報酬の一部損金不算入という制度が法人税法に設けられていたのですが、平成22年税制改正で廃止となりました。

    現実に利益を予測できるのか

    法人税法では役員報酬に対して多くの規制がされています。その中に、定期同額給与というものがあります。役員報酬は事業年度を通じて一定でなければ、損金算入を認めないというものです。
    年度末に会社に利益が出そうなので役員報酬を増額させたい!ということを考えても、増額分は法人税法上の経費と認められないため、法人税を圧縮することはできないことになっています。

    テナントの安定した不動産事業のように特殊な事業でなければ、上記のような年間利益を正確に予測することはできないのが通常です。
    ですから、単純に税率の差異だけを考えて法人事業の方が有利だということも言い切れないことに留意する必要があります。

    起業当初から多額の売上が見込めるのであれば

    大きな商圏を持っていて起業当初から多額の売上を計上できる事業を計画されている方もおられるかもしれません。こういう方は、法人税や所得税だけではなく、消費税のことも考えておく必要があると思います。

    消費税法では免税という制度があります。当事業年度の2期前の課税売上(通常は売上とほぼ同じ)が1000万円以下の場合には消費税の申告納税義務が免除されることがあります。
    たとえば、起業当初は個人事業として事業をスタートし、免税期間を終了したら法人化(法人成り)することで最大4年間消費税の免税事業者になることもあり得ます。
    詳細は別稿をご参照ください。

    個人事業ならなんでも経費にできる!?

    個人事業ならなんでも経費にできるので税金負担が軽いとお考えの方が稀にいらっしゃいます(笑)

    これは大きな間違えです!

    飲食費はおろか、生活雑貨や夕飯のお惣菜まで事業所得の経費にできるわけではありません。あくまでも「事業のために必要な経費」だけが税務上認められるに過ぎません。これらの領収書を経費処理していて重加算処理された事例を昔見たことがあります(爆)

    サラリーマンはしっかり税金を取られているのに個人事業主や社長はいろんなものを経費にできて不公平だとお考えの方もおられることでしょう。確かに、サラリーマンは源泉徴収によって所得のほとんどを確実に課税されることになりますが、先ほどの給与所得控除が認められてもいます。給与所得控除は元々サラリーマンも仕事着や靴・カバン・書籍など仕事上の必要経費がないのは不公平だということでみなし経費枠を設定したものです。実際に、前掲グラフほどの経費を使われるサラリーマンはいらっしゃるのでしょうか?サラリーマンが税務調査を受けることは通常ありませんしね。

    税金以外のこともありますね

    これまで主に税務面から解説してきました。税理士なのでこうなってしまうのですが、起業にあたってはその他のことも考えておかなければなりません。

  • 個人だから発注できない(発注しにくい)
  • 与信枠が小さいのでこれ以上の発注は受けられない
  • オフィスを借りるのに連帯保証人を求められる
  • 銀行は融資をしたがらない
  • 個人事業を行っていると、多かれ少なかれこれらの問題にぶつかることがあります。
    小規模な会社も個人事業も実態では差異はほとんどないと思うのですが、世間の風は個人に冷たいものです。
    起業当初を個人事業からスタートすることは否定しませんが、問題に頻繁にぶち当たるようであれば、タイミングをみて法人化することも考える必要があるでしょうね。




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